沖縄の南風が「師弟の足跡」を運んだ。巨人坂本勇人内野手(33)が体調不良で欠場した岡本和に代わり、986日ぶりに4番に座った。

1回に相手の失策を誘う遊ゴロで先制点を呼び込むと、3回、4回と2打席連続安打。プロ通算2133安打を積み上げ、阿部作戦兼ディフェンスチーフコーチを抜き、球団単独4位に浮上した。14年7月9日DeNA戦以来の沖縄での公式戦は球団史上初の主催試合。主将の活躍で巨人が同県初勝利を挙げ、首位に浮上した。

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心地いい風が吹いた。同点の3回1死。坂本がDeNAロメロの148キロ外角直球を右前へ乗せた。4回1死一塁、入江の外角に逃げる130キロスライダーに左腕をいっぱいに伸ばしてつかまえた。自軍の一塁ベンチ前を大きなストライドで横切りながら一塁ベースに到達。プロ通算2133安打をマークし、球団歴代単独4位に躍り出た。

2人だけの“節目の一打”に師弟ともに浸ろうとはしない。兄貴分として慕ってきた阿部コーチとはプロ2年目の08年オフから8年間にわたって、グアム自主トレに同行した。グラウンドのみならず、同じ釜の飯を食い、四六時中で大きな背中を追った。

10代のときは「リラックスするときはリラックスする。だから、やるときはやる。めりはりが大事」と少々こわもての師匠だった。

20代の時は「これからは勇人が中心になって引っ張っていく覚悟を持て。みんなが不安になる。どんなときでも笑っていろ」と26歳だった15年に主将を引き継いだ。

30代になって「もっともっとできる。まだまだできる。1本でも多く打って、1年でも長く、野球を続けろ」と認めてもらった。

ストイックに地道なトレーニングを繰り返し、目いっぱい野球を楽しんでいる姿がトレードマークになっている。チームを背負う責任感からなる重圧は年々、増す。でも、童心だけは絶対に忘れずにいる。阿部コーチから「自分と比べる選手じゃない。もっと上を(3000本)目指して頑張ってほしい」と託された。

主砲岡本和を欠く不安を主将が一掃した。3年ぶりのスタメン全員安打で今季初の2ケタ10得点。心地いい打球音が沖縄の風に乗った。【為田聡史】