“代打の神様”は、そう何度でも何度でも、勝負強さを発揮する。楽天銀次内野手(34)が、きっちりと“事を起こした”。ロッテ6回戦(楽天生命パーク)の5回2死満塁で代打起用され、期待に応える先制の適時内野安打。ボテボテの打球でも全力疾走で決勝点をもたらし、チームは球団記録をまた1つ更新して11連勝をマークした。

    ◇     ◇     ◇

試合中盤の5回裏。早くも勝負を決める男の登場曲が流れた。この日、デビュー30周年を迎えたMr.Childrenの「蘇生」。もちろん、打席へ向かったのは銀次だ。「なんとか“事を起こそうか”と」。

2ボールからの3球目。捉え損ねた。二塁ベース前への高いバウンドのボテボテのゴロ。全力で一塁へ走ると、遊撃手のエチェバリアはファンブル。記録は適時内野安打となった。「まあ“事は起きました”けど…」。ヒーローは、お立ち台で子どものように悔しがりながら言った。

銀次 振り返りたくないです。あの~早く室内の方へ行って、早くバッティング(練習)したいです。

そんな照れ笑いは、ファンへ向けた最高のギフトとなった。

試合序盤から代打準備の“サイン”が出ていた。石井GM兼監督は「今日はとにかく早い段階から準備してくれ、と。必ずチャンスのところで出したい」と、思い描いていた。

銀次も「2回くらいから用意していました」と心身を整え、準備万全で打席へ。花火のようにきれいな一打で仕事を果たすつもりだったが、結果的には渋い決勝打となった。「中途半端ですね。最悪のバッティングですね」。それでも、チーム11連勝を彩る一打に変わりはない。

9年前の歓喜をともに知る、田中将とのヒーローインタビューでは「しっかり将大が一生懸命投げていたので、必死に1点を取りにいきました」と、気を取り直して笑顔を見せた。これで、代打では7打数6安打4打点。勝負強く結果を残し続けるのは、まだ、やりかけの未来があるから。夢の瞬間を塗り替えるまで、何度でも何度でも打ち続ける。【木下大輔】