2日連続の「翔タイム」だ。巨人中田翔内野手(33)が、2戦連発の4号逆転満塁アーチで3連勝に導いた。3-5の7回1死二、三塁。4番岡本和の申告敬遠後、中日祖父江から左中間へ会心の1発を描いた。前日13日の同戦ではプロ初犠打とダメ押し2ランを決め、この日は19年8月9日以来となる5点差以上の逆転勝利に貢献。順位は3位ながら首位ヤクルトと0・5ゲーム差に再接近した「反撃の巨人」を、がむしゃらな姿で引っ張っていく。

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狂喜乱舞の渦に、中田は吸い込まれていった。ベンチを飛び出し、思い思いに跳びはねる巨人ナイン。ウォーカー、ポランコに激しいエルボータッチで迎えられ、原監督と両手拳を力強く交わした。ベンチに座った後もなお、観客の興奮が収まらない。逆転満塁弾は東京ドームに大きなエネルギーを生んだ。

「バントの次に興奮した」。前夜の初犠打を引き合いに、冗談交じりの中田節で喜びを表現。でも本音は「(打撃の感触は)興奮で覚えていないけど、すごく気持ち良かった」と感激しきりだった。

3点を追う7回1死二、三塁。岡本和の申告敬遠にも「頭に入れていたシチュエーション」と冷静に打席に立った。6回には同じ満塁機で凡退していただけに「絶対になんとかしてやろう」と悔しさをバネに変えた。カウント1-1から真ん中にきた祖父江の135キロスライダーを、見逃さなかった。

打撃不振で9日まで送った18日間の2軍生活。原点回帰を模索した。昨季途中まで所属した日本ハムでヘッド兼打撃コーチだった、巨人小笠原2軍打撃コーチにアドバイスを受けた。

ポイントは、3度目のパ・リーグ打点王に輝いた20年シーズンの感覚の再確認。「2年前を知っている。良い体も持っている。機能的なものを最大限活用していくことを重視した」(小笠原コーチ)。中田も「ファームの時間は無駄ではなかった。リズム、間合いの取り方を意識した」と着実に復調につなげた。

最近の練習では通常より約600グラムほど重い約1・5キロの長尺バットを振る。「重いので普通に振っていたらバットが遠回りする」とコンパクトなスイングを手に入れた。

絶好調だったオープン戦時、よく口にした「自信しかない」の言葉。連日の1発でそれを取り戻したかに見えたが、冷静だった。「日本ハム時代からそう。油断して調子に乗ったらまたアカンくなる。日々精進。油断はできない」。また明日へと、試合の興奮は胸にしまった。【三須一紀】

▼中田が2点リードされた7回に逆転満塁本塁打。中田の満塁本塁打は今年の4月3日阪神戦以来で通算7本目。「逆転満塁」は日本ハム時代の14年7月25日楽天戦の1点差、16年6月2日ヤクルト戦の3点差に次いで3本目。1点差、2点差、3点差と、すべての点差の逆転満塁本塁打を記録したのは06年清原(オリックス)以来9人目だ。この日は4番岡本和が敬遠された後の1発。中田にとって前打者が敬遠後の満塁弾は、19年3月29日オリックス戦(1死3塁から西川、近藤が敬遠)で打ったサヨナラ満塁弾に次いで2本目になる。

【ニッカン式スコア】14日の巨人-中日戦の詳細スコア