犬鷲を支える“神”がいる。楽天銀次内野手(34)が、0-0で迎えた9回に代打決勝打を放った。今季代打では11打数8安打、打率7割2分7厘と超人的な成績を残す。研ぎ澄まされた集中力で、チームを5カードぶりに勝ち越しに導いた。敵地連勝で勢いに乗り、本拠地仙台へ。27日からヤクルトとの両リーグ首位対決に臨む。

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雨が降りしきる甲子園。9回2死一、三塁。銀次は初球の内角直球を見送ると、フーッと息を吐いた。歩幅を広く、低く構える。投手をにらみ付けた。1ボールからの2球目。高めの直球を振り抜き、左前に落とした。遠かった1点。それをもぎ取り、一塁上で右手を突き上げた。「久しぶりにすごくいい詰まりができた。いい打撃をしたなという感じ」と、執念の一打に満足げだった。

今季先発は7試合のみ。代打で控える日々が続いている。出番が来るのは1球で試合が決まる場面。しっかりと仕留めるために普段から意識するのは“最初”だ。ティー打撃の1球目、ケージ打撃の1球目、宿舎でバットを振る1振り目。そこを追い求めてきた。

「打てるボールはしっかり打ちにいく。芯に当たってのいい打球は全くこだわっていない。バットのどこで打ってもヒットになればいい」。会心の当たりもボテボテの打球も同じ安打。内容よりも結果にこだわる。この日も最初のスイングで外野の前に落とす当たり。野球観が凝縮された打撃だった。

13年の球団史上初のリーグ優勝と日本一を、主力として経験した。それから9年。歓喜を知らない世代も増えてきた。「一生懸命やっている姿はもちろん見てほしいし、勝負強いというところも、もっと見せていかないと」と、日々闘志を燃やす。日米の野球界に旋風を起こす岩手出身。地元の選手だからこそ、東北に優勝を届けたい思いが強い。

楽天の選手として最も強く願っているのは、東北や被災地の子どもたちの中から1人でも多くのプロ野球選手が出ることだ。「その中で自分ができることをやっていければいいなと思っている」。自分たちのプレーを見て、野球を頑張ろうと思ってもらえれば、こんなにうれしいことはない。野球少年なら誰もが憧れる甲子園で勝負を決めたスイング。たくさんのファンの心を打った。【湯本勝大】

▽楽天松井裕(交流戦通算30セーブ)「たまたま甲子園で投げられたのですが、球場入りした際や中に入ったときに素晴らしい球場だなと思いますし、何歳になっても気分が上がってしまう場所です」

▽楽天岸(7回3安打無失点と好投)「(手応えは)やっぱり真っすぐかなと思います。感覚としては今年一番良かったです」

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