プロ野球選手は全てが順調なわけではない。ロッテ谷川唯人捕手(20)は20年育成ドラフト1位で立正大淞南(島根)から入団し、1年目の春に腰の椎間板ヘルニア摘出手術を受けた。プロ2年目の今季、苦しみながらもようやく2軍でプロ初安打。1年後輩の松川虎生捕手(18=市和歌山)の活躍も直視しながら、自らの奮闘を誓う。オンラインインタビューで現状を尋ねた。【金子真仁】

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競争の世界だ。20歳になったばかりの谷川にとって、同じポジションでドラフト1位の18歳松川の活躍は、どう映っているのだろう。その現実について「あまり(現実を)認めたくはないですけど」と苦笑いの前置きをしつつも、谷川は堂々と話した。

「素直にすごいとは思います。周りの先輩方も、松川を褒めているのは聞くので。1年目で1軍であれだけ活躍するのは、素直にすごいなと思います」

近い年代。捕手のレギュラーポジションは1つしかないから、分かりやすいことこの上ない「ライバル」になる。その好敵手が、佐々木朗希投手(20)の完全試合をサポートした。もちろん、見た。

「(捕手として)あれくらいゲームを作れて、140キロ台後半のフォークも止めたりするので。すごいなと思います」

その佐々木朗と向き合う谷川の姿があった。1年前の石垣島春季キャンプ。ブルペン投球で捕手を務めた。「ベース付近での球の伸びと勢いがものすごかったです」と明かしていた。守備力を評価されての育成指名。順調なスタートに見えたものの、腰を痛めた。寮長や先輩から「手術するなら早めの方が」「支配下目前の時にケガをしたら大変」と背中を押され、4月には手術を受けた。

そこから1年。谷川は今、外野手としてイースタン・リーグの公式戦に出場している。荻野、角中、菅野らが故障し、チーム全体として外野手が足りていない現状で、足と肩がある谷川がスタメンで使われる機会が増えた。「安打も少しですけど出てきたので、投手の球筋や球自体には慣れている部分はあるとは思います」と手ごたえは日に日に増している。

打席でももがいていた。開幕から19打席連続でノーヒットだった。

「去年は自分はあまり試合経験もなかったので、首脳陣の方々からは『経験すれば打てる』とずっと言われてたんですけど、かといって安打が出ないというのは落ち込んで。さすがに20打席近く打てなかったら、というのはあったので。でも、どうにかというのは常に思っていました」

19打席のうち、10打席が三振だった。ただ、谷川自身は、手も足も出ない状況では決してないと感じていた。

「映像とかを見ても、ボール球に手を出しちゃうので。だから結局、自分が苦しくなるっていう感じですかね」

4月17日のヤクルト戦(戸田)で、20打席目にしてようやくレフト前へ初安打。その後はマルチ安打も2度、記録している。

「意識的なものは変わりました。まっすぐに打ち勝てるだけのスイングと下半身。やっぱり、まっすぐを打ち返さないと抑えられるなというのはあったので、まっすぐをきれいにセンターに打ち返すというのは意識してやりました」

4月21日、西武戦(ロッテ浦和)で放った自身初のサヨナラ安打は、まさに狙い通りの打球だった。

同じくディフェンスを売りにする柿沼、植田が育成入団からの支配下契約をつかんでいる。谷川もまずはそこが目指すところだ。

「ゴールラインじゃないですけど、どこまでいけば支配下してもらえるレベルなのかというのが分からないので」

少しばかりの不安を感じるのは、誰しも同じこと。このオフに背番号122をもう少し軽く-。「前半戦のうちにファームで結果を出してアピールしておかないといけないと思っています」。捕手でも外野でも。とにかく、谷川唯人の名を売りたい。

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