DeNA今永昇太投手(28)が史上85人目、通算96度目となるノーヒットノーランを達成した。「日本生命セ・パ交流戦」の日本ハム戦で、許した走者は1四球のみの「準完全」で球団52年ぶりの快挙を演じた。4月10日オリックス戦で完全試合を達成したロッテ佐々木朗、5月11日の西武戦で達成したソフトバンク東浜に次ぐ今季3人目で、札幌ドームでは史上初の達成者となった。球団では大洋時代に鬼頭洋が70年6月9日のヤクルト戦で達成して以来4人目。「投げる哲学者」と称されるエースが球史に名を刻んだ。

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ノーヒットノーラン達成の瞬間、今永は小さく左拳を握った。表情を大きく変えることなく、ベンチから優勝したかのように飛び出した選手たちとクールにハイタッチを重ねた。

今永 そこまで深い意味はないんですけど、ここは僕たちのホームではないので、あまり大喜びしてもなって。そんな感じです。

記念の花束を手に、再び向かったのはマウンドだった。自ら117回踏みならした跡を右足で、左足で丁寧に整備し、仲間が待ち受けるベンチに戻った。球団52年ぶりの快挙でも今永は自らの流儀を貫いた。

最速151キロの直球を軸にカットボール、チェンジアップ、カーブと豊富な変化球を交えた。回を追うごとに「ノーノー」の雰囲気がベンチに充満したが、高い集中力を維持。三浦監督が就任後初めて言葉も目も合わさなかったほど、ゾーンに入った投球だった。

マウンドでは、独特の概念を持ち合わせる。「調子がいいとか、悪いとかという概念はないです」。19年のプレミア12でともに戦ったオリックス山岡から授かった考え方だった。過去を排除し、今の自分と向き合った投球で、「雲の上の存在」と憧れる新庄ビッグボスを脱帽させた。

「投げる哲学者」と称されるエースは、普段の生活でも野球へのヒントを探求する。先日、出会ったのは人間の細胞の中にいるミトコンドリアを研究した本を要約するYouTubeチャンネル。「体の回復にミトコンドリアは大事ってことを勉強したので、増やすように頑張っています」。増殖に関係すると聞いたトマトやタマネギをスーパーで購入し、食卓に並べる。

今季はロッテ佐々木朗が完全試合を達成し、ソフトバンク東浜がノーヒットノーランを達成した。試合後、いつかは自分もと憧れた快挙を達成し、本音が漏れた。「本当に今日は夢のようですし、これをまだあと何回かやれたら、野球人生としても最高かなと思います」。【久保賢吾】

 

▽DeNA三浦監督(今永のノーヒットノーランに)「最高の投球をしてくれた。真っすぐの押し込みもチェンジアップの抜けも良かった。(球団では)52年ぶりの快挙ですから、横浜の歴史に名を残したと思いますし、これからもっと積み重ねていってくれる投手ですから頼りにしています」

 

▼今永が今年の5月11日東浜(ソフトバンク)以来、プロ野球85人、96度目のノーヒットノーランを達成した。DeNAでは大洋時代の70年6月9日鬼頭以来、52年ぶり4人目。まだ達成投手がいない楽天を除くと、DeNAの投手がノーヒットノーランから最も遠ざかっていた。また、交流戦で記録したのは06年5月25日ガトームソン(ヤクルト)12年5月30日杉内(巨人)に次いで3人目。

▼今永が許した走者は2回、四球の清宮だけ。許した走者が1人で達成は18年7月27日山口俊(巨人)以来17人、18度目。走者1人だけで完封する「準完全試合」は今年の5月6日大野雄(中日=1安打)以来48人、51度目だが、DeNAでは今永が初めて。

▼今季のノーヒットノーランは4月10日佐々木朗(ロッテ=完全)5月11日東浜に次いで3人目。1シーズンに3人以上が達成は12年以来で14度目(最多は40年の5人)。3カ月連続で出たのは、95年の7月5日西崎(日本ハム)8月26日佐藤義(オリックス)9月9日ブロス(ヤクルト)に次いで2度目。

【ニッカン式スコア】7日の日本ハム-DeNA戦詳細スコア