阪神が今季初のAクラス入りを果たした。6月絶好調の5番大山悠輔内野手(27)が18日のDeNA戦でも2戦連発となる17号2ランを放ち、5連勝に貢献。開幕9連敗から最下位を独走した春は今や昔。ついに3位に浮上し、2位巨人に3.5ゲーム差。はい上がった虎が、セ界の台風の目となっている。

   ◇   ◇   ◇

大山は少し恐縮しながら、ちょこんと頭を差し出した。帽子を取った矢野監督から最敬礼され、驚かないはずがない。虎メダルをかけられると、一塁ベンチ前を照れくさそうに駆けた。

「いやあ、もうね…。敬礼に値するようなホームランをずっと打ってくれているので」

指揮官が手放しで褒めたたえた1発は3回に飛び出した。1点リードの2死一塁、フルカウント。左腕浜口の115キロカーブにパワーをためて強振し、バックスクリーンに運んだ。2戦連発の17号2ランでチームを5連勝、3位浮上に導き、「チームが勝つことが1番」と声をはずませた。

過去にカーブをバックスクリーンに運んだ記憶は1度もない。「元々、バックスクリーンへの本塁打は少ない。練習で意識していることがしっかりできた。すごくいいホームランだった」。緩い球を強く仕留める。好調を象徴する1発には、常日頃から自分に厳しい男もさすがに納得顔だ。

開幕9連敗を喫した今春。苦悩の期間は家族全員で乗り切った。27歳の誕生日を迎えた昨年12月19日に結婚。愛妻と愛猫2匹には日々感謝してもしきれない。

「あまりいい結果じゃない時も前向きにさせてくれる。家に帰った時、走り回っている猫の姿を見ているだけでも全然違います」

昨夏から共に暮らす子猫のラテに加え、今年からは三毛猫のミミもファミリーの一員に。「にぎやかですよ」と照れ笑いする家族の支えもあって、今は絶好調をキープする。

この日は「DAZNバックスクリーンホームラン賞」で100万円もゲットした。6月は13試合9本塁打で「自分でもびっくり。勝ちたい気持ちがそういう結果を生んでいるのかな」。86年6月にバースが記録した球団最多の月間13本塁打も狙える勢いだが、「先を見ても仕方がない」と冷静な姿勢も大山らしい。

「本当に話すことがないので、今日は後輩に任せます」。甲子園5戦連続のお立ち台では佐藤輝、伊藤将に主役の座を譲り、控えめに勝利の余韻に浸った。

「今、いい雰囲気でできている。そのまま乗っていきたい。上に行きたいという気持ちをしっかり持ちながらやっていきたい」

最下位独走からはい上がり、いよいよ上位の戦いへ。2位巨人に3.5差。腕ぶす背番号3の存在感が頼もしい。【佐井陽介】

▼大山が6月に入って9本塁打の大当たり。チーム全10本塁打中ほぼ独占状態だ。これで月間2桁本塁打に王手。大山が到達すれば、阪神ではブラゼルが10年6月に10本塁打して以来。日本人では、浜中治の06年4月10本塁打以来。なお球団最多は86年6月のバース13本塁打。日本人最多は11本塁打で、田淵幸一が75年4月と78年8月、真弓明信が85年8月に達成。なおプロ野球最多は、13年8月バレンティン(ヤクルト)の18本塁打。

▼佐藤輝が大山とそろって打点を挙げた今季の試合で、阪神は11勝1敗。3月30日広島戦で負けたのみで、4月22日ヤクルト戦から11連勝だ。

▼6月に入って阪神は、全13試合で4番佐藤輝、5番大山の並びを継続。11勝2敗と快走中だ。今月だけで2人の打点そろい踏みは4度。左右の主軸がかみ合い、白星を重ねている。

【関連記事】阪神タイガースニュース一覧