崖っぷちの虎が最後の意地を見せる。逆転クライマックスシリーズ(CS)進出へ、残り4戦全勝を期す5位阪神が、23日広島戦(マツダスタジアム)に臨む。敵地広島は、佐藤輝明内野手(23)が昨季終盤に復活の24号を放った舞台。再現弾でNPB左打者では初となる新人年から2年連続20発なるか。矢野燿大監督(53)も「諦めるつもりは全くない」と決意を固めた。

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土俵際に立たされても求めるものは変わらない。佐藤輝は静かに、それでも力強く言った。「ホームランが一番得点になると思う。しっかりどんな形でも打点を挙げられるように頑張ります」。最短で25日にCS進出の可能性が消滅する。3位巨人を1・5差、4位広島を1差で追いかける今、1発長打で流れを変える時だ。

打てば、左打者ではプロ野球史上初となる新人年から2年連続20本塁打。昨季、佐藤輝が24本塁打で塗り替えるまで新人左打者最多本塁打記録保持者だった大下弘でも、1年目20本塁打(1946年)に対し2年目は17本塁打(47年)。その壁がいかに高いか分かる。

「(残り試合は)少ないですけど、変わらず目の前の試合を頑張りたいと思います」。終戦直後のプロ野球で赤バットの川上(巨人)に対して「青バットの大下」と呼ばれた通算201本塁打の大打者のように、この日は青いバットで打撃練習。1時間超振り込み戦いに備えた。

前夜は初回の満塁機で2点打も、延長10回1死一、二塁のサヨナラ機では見逃し三振。糸井の引退試合を飾れずグッと悔しさを押し殺した。セレモニーで「頑張れよ」と言葉をもらった背番号8は「チャンスあるんで、ほんとに目の前の試合を勝っていくことしかできないと思うので頑張ります」。現役最終打席で左前打を決めた先輩の勝負強さを見習い一振りにかける。

まずは23日広島戦。矢野監督は「残りの4試合、(選手は)全力で戦い切るという思いもあると思う。俺ももちろん諦めるつもりは全くないので。信じて戦うしかないんで」。佐藤輝には「あいつらしく、まずは振っていくということでいい」とフルスイングを求めた。マツダスタジアムは昨年10月、約2カ月ぶりのアーチで24号を決めた舞台だ。再現弾なるか。絶体絶命の虎を救ってくれ-。【中野椋】

 

▼新人年から2年連続で20本塁打をクリアしたのは過去9人。阪神では田淵幸一が69年22本、70年21本を記録したのが唯一。佐藤輝と同期の牧秀悟(DeNA)が21年22本、今季すでに24本塁打を放っており、佐藤輝が続けば69~70年田淵と有藤通世(ロッテ、21本→25本)が記録して以来の同期ダブル達成となる。