リーグ連覇を飾ったヤクルトにあって、担当記者のイチオシが、「チームスワローズ」のアットホームな雰囲気に大きく貢献する塩見泰隆外野手(29)だ。リードオフマンとして打線をけん引する一方、ムードメーカーとして空気を和ませ、お立ち台では「名言」も。選手として、盛り上げ役として、チームに欠かせない存在だという。

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シーズンを通じて村上の貢献度は傑出しているが、「前半戦のMVP」級の活躍を見せたのが塩見だ。5月27日楽天戦では3打席連続本塁打をマーク。打率3割1分4厘、12本塁打。当時リーグトップの22盗塁の好成績で、ファン投票で球宴初出場も果たした。

特に印象深いのが7月2日DeNA戦(神宮)のヒーローインタビュー。プロ初のサヨナラ打を放ち、チームに2リーグ制後では史上最速となる優勝マジック53が点灯した。お立ち台で発した「本当に家族のようなチーム。毎日毎日、クラブハウスに来るのが楽しみで…」は、今季のチームを象徴する名言だと感じた。

普段の取材でも、飾らない言葉での素直な対応が印象に残る。担当する以前は感覚でプレーしているイメージもあったが、実際はスコアをつけて動画をチェックし、川端や嶋ら先輩の助言にきっちり耳を傾ける。たまに珍発言はあるが、ビッグマウスはたたかないと心に決めているらしい。

節目の全体ミーティングでは、訓示を終えた高津監督から「締めのひと言」をむちゃぶりされるのが恒例だ。交流戦明けの初戦の6月17日広島戦の前には、指揮官がナインを鼓舞した直後に「今日から後半戦が始まるということで、全員気合入れて今日の勝ちに集中して頑張りましょう。そしてムーさん(中村)。僕はバースデーアーチ(6月12日ソフトバンク戦で)打ちましたんで。ムーさんも必ず打てると信じてます。はい、みんなで頑張っていきましょう! ゥエーイ!!」と気勢を上げ、場を和ませた。中村に誕生日弾こそ出なかったが、チームはカード3連勝を飾った。

7月にコロナに感染し、8月は調子を落としたが、9月に入って復調。同9日広島戦で3安打を放ち、久々に本拠お立ち台へ。「9月9日ということで。僕の背番号は9番で、僕の日だと思っていた。“持っている”選手だったらサイクル(安打)出来たと思うんですけど。村上じゃなくて僕だったので、出来なかったです」と笑いを誘った。残り試合も、ポストシーズンも、飾らぬ言動とスピード感あふれるプレーでファンを沸かせ、チームをもり立ててくれるだろう。【ヤクルト担当=鈴木正章】

◆塩見泰隆(しおみ・やすたか)1993年(平5)6月12日生まれ、神奈川県出身。武相-帝京大からJX-ENEOSを経て、17年ドラフト4位でヤクルト入団。昨季は9月18日巨人戦でサイクル安打を達成するなど、打率2割7分8厘で初めて規定打席に到達(13位)。初のベストナインを受賞した。今年5月27日楽天戦では3打席連続本塁打。179センチ、76キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸4500万円。

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