巨人の井上温大投手(21)が、4度目の先発で「プロ初勝利」と「新記録達成」を飾った。打線の援護があったものの自己最多の6回を投げ、7安打6奪三振の3失点にまとめた。巨人の今季プロ初勝利は井上が8人目で、同一シーズンでは最多新記録となった。チームも若き3年目左腕の熱投で3位をキープ。4位の阪神と広島に1・5ゲーム差をつけ、残りは4試合。クライマックスシリーズ(CS)進出に向けて弾みをつけた。

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井上が“感謝のプロ初勝利”を挙げた。初のヒーローインタビューで、ちょっぴり控えめにほほえんだ。「野手の皆さんが点をたくさん取ってくれたり、ファインプレーで助けてくれたので感謝したい」。大量9点の援護を得て6回7安打3失点と粘った。最速149キロ直球とスライダーを軸に5回まで毎回の6奪三振。「まずは勝てて良かった」とホッとした。

2年目の昨季はイースタン・リーグ開幕投手を任されるほどの期待を受けた。しかし、昨年5月に左肘頭スクリュー挿入術を受け、育成選手の立場も経験した。今も左肘には約1センチのボルトが埋め込まれたまま。「何をしてても痛いときもあった。本当に治るのかなと」と不安に駆られた。1年間のリハビリを経て復活後は球速もグングン伸び、前回登板の8日DeNA戦では狙って自己最速の150キロをマークするまでに成長した。「いろんな人の支えがあった。感謝しながら、これからも野球を頑張りたい」と強調した。

1年目のオフは西武内海に弟子入り。「人生で1番つらかった」という過酷なランメニューに食らい付いた。長いときは1時間走りっぱなし。ただ、こなしていくうちに大嫌いだったランメニューの重要さに気付いた。昨オフの自主トレを打ち上げた際にはダメ元で「グラブが欲しいです!」と頼むと、快くプレゼントしてもらった。「使えないし、一生使いたくない(笑い)。寮の部屋に保管してます」と宝物になった。

19日の師匠の引退登板では、名だたるスターたちと並ぶのが恐れ多くて「井上温大」の花を贈れなかった。「ヒーローインタビューのときに内海さんのことを言ったら良かったんですけど、浮かばなくて…。これからもどんどん勝って、内海さんに恩返ししていくので、見ていてください」。もらった恩は、1勝1勝の積み重ねで必ず返す。ようやく、スタートが切れた。【小早川宗一郎】

◆井上温大(いのうえ・はると)2001年(平13)5月13日生まれ、群馬県出身。前橋商3年夏に群馬大会決勝で前橋育英に敗れ、甲子園出場なし。19年ドラフト4位で巨人入団。21年5月に左肘を手術し、オフに育成選手として契約。今年7月11日、支配下選手に登録された。7月16日広島戦に3番手で登板し、1軍デビュー。175センチ、78キロ。左投げ左打ち。

▼3年目の井上がプロ初勝利を挙げ、今季の巨人はプロ初勝利を記録した日本人投手が8人目。シーズン8人がプロ初勝利は05年中日、17年オリックスの7人を抜く最多人数だ。巨人は新外国人のシューメーカーが4勝、クロールも1勝しており、来日初勝利の外国人投手を加えた「初勝利」は10人目。こちらも11年横浜(日本人5人、外国人4人)17年オリックス(日本人7人、外国人2人)の9人を抜いて最多となった。

▽巨人原監督(井上について)「4度目の先発で勝ち投手になったということがね、悔しい思いもしただろうし、勉強の中でね、勝ち投手になれたことが全てだと思いますよ。決して体も大きくないけれど、躍動感のあるピッチングというのは、あと10年、15年、20年、忘れないでほしいなと思いますね」

○…坂本が歴代5位タイとなる通算178度目の猛打賞を決めた。2回1死二、三塁での右前適時打で、史上21人目の通算2200安打に到達。6回無死二、三塁では、この日3安打目となる中前適時打を放った。福本豊(阪急)と松井稼頭央(西武)に並ぶ記録に「偉大な先輩方と並べて光栄です。これからも大事な試合が続くのでチームの勝利のために全力を尽して頑張ります」と話した。

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