ヤクルトがサヨナラ劇で、2年連続9度目のセ・リーグ優勝を飾った。連覇は野村克也監督時代の92、93年以来2度目。5月12日に首位に立ち、7月2日には2リーグ制後の最速でマジックを点灯させた。そして今季137試合目のこの日、本拠地では7年ぶりの優勝を決めた。

3安打無得点に封じられた打線が9回、DeNAの3番手エスコバーをとらえた。先頭のホセ・オスナ内野手(29)が遊撃への内野安打で出塁。代走には、前日負傷交代した塩見泰隆外野手(29)が送られた。中村悠平捕手(32)が1球で送りバントを決めると、途中出場のドラフト2位ルーキー丸山和郁外野手(23)が左中間を破るサヨナラ二塁打。二塁から塩見が歓喜の生還を果たした。首脳陣と選手もグラウンドに流れ込み、ナインの手で高津臣吾監督(53)が胴上げされた。

終わってみれば圧倒的な強さでセ界を制したヤクルトだったが、道のりは平たんではなかった。

開幕直前に正捕手の中村が故障。先発の軸として期待された奥川も初登板の3月29日巨人戦で緊急降板して長期離脱し、5番サンタナも4月6日に負傷。主力を序盤で欠く想定外はあったが、高津監督は、選手に無理をさせない「高津流マネジメント」を継続した。5月初旬に中村が復帰して投打がかみ合うと、4年ぶりの交流戦優勝を完全制覇で飾った。敵地での場内インタビューで「リリーフみんながMVPだと思っています」と中継ぎ陣を称賛した。

7月2日にマジック53が点灯。そのまま突っ走るかと思われたチームは、コロナ禍に見舞われた。高津監督ら首脳陣、山田、青木、中村ら主力が続々と感染する非常事態。同29日はマジックが消滅。一時は2位DeNAに4ゲーム差まで迫られたが、8月26日からの直接対決3連戦で3連勝。再び首位を不動のものとした。

連覇を飾ったチームの中心に座るのが、令和初の3冠王を狙う不動の4番、村上宗隆内野手(22)だ。この日は4打数無安打、9試合連続ノーアーチと封じられたが、貢献度は文句なしのMVP級。日本新記録となる5打席連続本塁打や、ここまで日本選手最多となるシーズン55本塁打を放つなど、記録と記憶に残るアーチをハイペースで量産した。

今季の欠場は、倦怠(けんたい)感を訴え特例2022の対象で登録抹消となった8月6日巨人戦のみ。多くのコロナ感染者が出た窮地では「こういう時だからこそより一層、一致団結してやることで力は大きくなるし強くなる。その中心に僕がいることは本当に自覚していますし、何とかチームを勝たせられるように引っ張っていけたら」と強い覚悟でチームを支えてきた。

細心の選手管理と言葉の力で2年連続のリーグ優勝に導いた名将と、勝負強い打撃で何度も勝利を呼び込んだ「村神様」。ヤクルトに黄金時代が到来した。

 

○…野手最年長40歳の青木が、精神的支柱となった。王手に合わせてこの日、1軍合流。7回の2死一、二塁の場面で代打で出場すると、四球を選んで満塁機を演出した。コロナ禍で6連敗を喫した8月11日広島戦後に、山田らとともに選手を集めてミーティングを開催。「曇り空の上は、いつも晴れ。とにかく信じてやっていこう」などと語り、気持ちを落ち着かせた。立て直してのリーグ連覇に笑顔だった。

○…守護神マクガフが優勝を呼び込んだ。0-0の9回に登板すると、宮崎、ソト、嶺井を打ち取り3者凡退。その裏、サヨナラで勝利投手となった。キャンプ前にコロナ感染はあったが、シーズン中は離脱もなく安定した投球を披露。37セーブ、防御率2・09の好成績で守護神の役割を果たし、「チームの勝利に直結するので、ゲームをちゃんと締めることが一番大事」と自身の言葉を体現した。

○…田口麗斗投手が歓喜に沸く本拠地を盛り上げた。優勝セレモニーが一段落すると、ひとりマウンド付近に立って両手を広げ、スタンドに拍手を要求。最高潮になったところで、ひと呼吸置いて「パン、パパパン!」と手拍子を合わせた。普段は勝利時にブルペン付近で行っている恒例のパフォーマンス。ムードメーカーとしては「優勝を目指してぎりぎりの戦いをやってきた」と胸を張った。

○…高卒3年目の長岡秀樹内野手が大ブレークを果たした。開幕から遊撃の定位置を勝ち取ると、コロナ感染で離脱はあったが、ここまで131試合に先発出場し打率2割4分4厘、8本塁打、47打点。主に8番で存在感を示し、同2年目の内山壮、同4年目の浜田らとともに「ヤングスワローズ」として連覇に貢献した。「使って使ってもらった部分が多いんで、これからは自分の実力で、僕しかいないって思われる選手になりたい」と話した。

○…高卒2年目捕手の内山壮真捕手は、飛躍のシーズンとなった。春季キャンプから1軍に抜てきされ、初の開幕1軍入り。正捕手中村の故障もあり、33試合でスタメンマスクをかぶった。主に42歳石川との22歳差バッテリーを組んだ。5月24日の日本ハム戦でプロ初本塁打を放つなど打撃でも成長。「しっかり結果を残していきたいというのと、使ってもらえるようにしっかりアピールしていきたい」とさらなる進化を誓った。

○…正捕手の中村悠平が攻守に地力を発揮し、連覇に貢献した。同学年の先発小川を強気なリードでけん引し、9回無死一塁では、きっちり犠打を決めて丸山和のサヨナラ二塁打をお膳立てした。「優勝した次の年が大事」と意識したシーズンの最終盤で、きっちり仕事を果たした。

▽ヤクルト石川 新しい選手が出てきて、僕自身も刺激になりましたし、チームとして底上げもできたと思う。大黒柱はムーチョ(中村)。開幕から1カ月は出られなかったですけど、(内山)壮真だったり若い選手がカバーできたので、チームとして強くなったなと思います。

▽ヤクルト・マクガフ(9回を抑え、その裏のサヨナラ劇で勝利投手に) チームの勝利に直結するので、ゲームをちゃんと締めることが一番大事。

▽ヤクルト根岸孝成オーナー ディフェンディングチャンピオンとしてプレッシャーがかかる中で、高津監督をはじめ、コーチ、選手、フロントの皆さんが一丸となり、チームスローガンである「熱燕」を体現した優勝であると思います。引き続きCSを勝ち抜き、躍動する野球で球団史上初となる日本シリーズ連覇を果たしてくれることと確信しています。

▽ヤクルト衣笠球団社長兼オーナー代行 連覇には計り知れない難しさがあったと思いますが、高津監督の下、ベテラン、中堅、若手がチーム一丸となって躍動し、まさにチームスローガン「熱燕」を実現してくれました。

▽成田ヤクルト本社社長 高津監督をはじめ、コーチ、選手、フロントそして全国のスワローズファンの皆さまがひとつとなり「チームスワローズ」として情熱をもって戦った結果だと思います。

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