扇の要としてヤクルトを支えた中村悠平捕手(32)が、日刊スポーツに手記を寄せた。今季から元監督の古田敦也氏の背番号「27」を継承。開幕直前のケガやコロナ感染、若手の台頭もあった中で、悲願のリーグ連覇を成し遂げた思いを記した。

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背番号27をつけられる。プロに入った時からの夢で頑張ろうと思っていた矢先に、ケガで開幕からいられなくなった。個人的にも苦しかったし、チームにも迷惑をかけた。復帰した時は高津監督に「休んだ分、取り返してくれ」と監督室で言われたのを覚えてます。

5月3日、甲子園での阪神との“開幕戦”。同級生の小川もまだ1勝もしてなかった。いいところを引き出したいと常々思っていて、ブルペンから「お互い“開幕”しようぜ!!」と試合に臨みました。ピンチで佐藤輝に全6球をインハイに投げたのは、合っていないと自分なりに見抜いた。大胆と言えば大胆。でも、これが正解だと自分に言い聞かせた。完封したけど、まだ取り返したいという気持ちで毎日やっていました。

だけど7月にコロナに感染して、もどかしかった。復帰したら、すぐ貢献したいと思っていたけど、体力的に落ちている部分もあったし、復帰時期がとてつもなく暑くて。こんなこと言うとダメだけど、なかなか集中しきれなかった。

苦しかった中でチームメートを誇りに思い、このチームは強いと思ったのは、8月終盤のDeNA3連戦。明らかに向こうに勢いがあるのに、敵地で3連勝できた。自分もちょっと楽になったし、追い上げられても自分たちの戦いができるんだと再確認できました。

その3連戦でも大活躍したムネ(村上)は本当にチームの中心。苦しい時に打ってくれて、勇気づけられる。見ていてワクワクさせられる。怪物です。味方で良かったけど、ああいったバッターを相手に1度、リードしてみたい思いはある。どういう見え方をするか、抑えたら気持ちいいだろうなとか。でも抑えるイメージが湧かない。打ち損じを待つだけです(笑い)。

若手で出場試合を伸ばした(捕手の内山)壮真は本当に刺激になる。ベンチで見ている時は僕だったらこういくかなと思うんですけど、あ、そういった方法もあるんだなと、新たな発見もあったり。でもこのポジション、1人しか出られないので。やっぱりそこは、まだまだ譲りませんよ、という気持ちにはなります。

27番は、最初キャンプでつけた時は、重みや責任感はすごくあった。天と地ほどの差がある古田さんに追いつくことはできないけど、僕なりにチームを引っ張ろうとつけさせてもらいました。プレッシャーには打ち勝てたんじゃないかな。

古田さんには「せっかく上に上った階段を、自らの手で下げちゃダメ。そこから1段でも、2段でもいいから、少しずつ上っていくことが大事」と今年のキャンプで言われました。15年に優勝して、次の16年は個人成績も散々で、チームもBクラス。だからこそ今年が大事と自分に言い聞かせて臨んだシーズンでした。

「強いチームにはいいキャッチャーがいる」と元監督の野村さんもおっしゃいましたが、そこはバリバリに自分も意識しています。みんながコロナにかかって、チームがバラバラになったところもあり、本当に簡単ではなかった。しっかり立て直して、チーム一丸となっての優勝。昨年とはまた違った喜びです。(ヤクルト捕手)

◆中村悠平(なかむら・ゆうへい)1990年(平2)6月17日、福井県生まれ。福井商で甲子園2度出場。08年ドラフト3位でヤクルト入団。15年に自己最多の136試合に出場し、リーグ優勝に貢献。15、21年にベストナイン、ゴールデングラブ賞受賞。21年日本シリーズMVP。今季から古田敦也氏以来15年ぶりに背番号27を継承。176センチ、83キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸1億7000万円。