運命の決戦が始まる。阪神は27、28日に2連覇を決めたヤクルトとの2連戦(神宮)に臨む。

クライマックスシリーズ(CS)進出を争う3位巨人とは0・5ゲーム差で、4位で並ぶ広島と歴史的大混戦。2連勝ではずみを付けて最終戦となる10月2日ヤクルト戦(甲子園)を迎えたい。今季限りで退任する矢野燿大監督(53)は大一番を前に、必死のパッチを宣言。さあ、矢野虎よ、奇跡の扉をこじ開けろ!

   ◇   ◇   ◇

もう必死のパッチだ。4年間、ともに戦ったナインと一緒にユニホームを着るのもあとわずか…。すべてはレギュラーシーズン残り3試合にかかっている。全体練習が行われた晴天の甲子園。矢野監督が絶対全勝を宣言した。「最後に3つ勝つというのが、ある意味条件になると思う。その思いはみんな持ってくれている。まあ、まず明日やけどね」。絶対に1つも落とせない。決死の覚悟だ。

なりふり構わずタクトを振る。試合のポイントを問われると「まずは投手が頑張ってもらわないと。中継ぎもどんどん行くことになる。野手でいえば、先制点を取ることでそういう流れに持っていける」とプランを語った。

27日は最多勝を争う12勝青柳、28日は2年連続2桁勝利を目指す伊藤将の先発が予想される。だが、「もちろんチーム優先。ここまで来て当たり前」と状況次第で序盤からの継投も視野。湯浅ら中継ぎも「どの投手も3つ行ってもらう可能性がある」と迷いなくつぎ込む。現役時代に「必死のパッチ」のフレーズでファンを沸かせた指揮官が、必死のパッチ采配で勝利を呼び寄せる。

不思議な縁かもしれない。退任イヤーのレギュラーシーズン残り3戦はヤクルトとの対戦になった。就任1年目の監督初勝利も相手はヤクルトだった。2020年からは同学年の高津監督が就任。昨年には神宮で「サイン盗み騒動」もあった。再び神宮に帰ってきて高津ヤクルトとCSファイナルを戦うことができるか。数々の因縁があるツバメ軍団との3番勝負が、運命を握っている。

「負けたらとか、そんなふうに思って野球をやってほしくない。勝てばいいんでしょっていうくらいのことを、みんなベンチの声でもそうやって思ってくれている。そういう風な気持ちは当然持ってくれるチームに俺は育っていると思っている」。緊張感漂う運命の3連戦。神宮2連戦を終えると、CS進出の行方は巨人、広島の「結果待ち」となるが、「勝ちゃあいいんじゃない?」と言い切った。奇跡の逆転CS進出をもぎ取れば、退任へのカウントダウンも延びる。【桝井聡】

<阪神矢野監督とヤクルトの因縁>

◆監督初勝利(19年3月29日) 就任後初戦は劇的勝利。延長11回に先頭の代打鳥谷が三塁打を放ち、1死後に暴投でサヨナラ勝ちを飾った。指揮官初白星に「一生忘れられない1勝になる。俺自身は緊張しながらも楽しめた」。

◆監督100勝目(20年9月3日) 珍プレーで逆転勝ち。2-3の7回2死二、三塁から、投手のマクガフが走者のいない一塁へけん制悪送球。2者が生還して接戦をものにした。

◆試合中に報道陣と情報伝達疑惑(20年9月26日)

審判団がリプレー検証中に、次打者席の近本がバックネット裏記者席と情報伝達のやりとりをしたのではと疑われた。矢野監督は審判団に疑義を伝えられて約5分間、口論。試合後にも約3分間、話し合った。「そんなん俺らはするわけない」ときっぱり。

◆サイン盗み疑惑(21年7月6日) 二塁走者の近本の動作が打者の佐藤輝にサインを伝えていると三塁手村上が指摘。ヤクルトベンチから「動くな!」と声が上がり、阪神が「絶対にやってない。ごちゃごちゃ言うな」と応酬。矢野、高津両監督が審判団の前で約2分間話し合った。

◆監督200勝目(21年10月9日) 2位阪神がM点灯中の首位ヤクルトに競り勝った。セットアッパー岩崎と守護神スアレスをともに今季初めて「ダブル回またぎ」。執念タクトで監督通算200勝目をつかんだ。

◆最大7差逆転されV逸(21年10月26日) 2位に最大7ゲーム差をつけながら、猛追された。最終戦に敗れてヤクルトの優勝が決まり、「勝ちきれなかったからこそまだまだ成長が必要」。

【関連記事】阪神ニュース一覧