ロッテ佐々木朗希投手(20)の夢は持ち越された。レギュラーシーズン最終登板のソフトバンク戦(ペイペイドーム)は6回1失点。同点で降板し、自身初の10勝目はならなかった。4月の完全試合達成など、球界の枠を超えて騒がれた1年。体力面などに課題も残しながら優勝、2ケタ勝利、165キロなど夢の数々をプロ4年目となる来季に見据える。岩手・大船渡高時代から密着する担当記者が、初めて1年間投げきった今季に潜入する。

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佐々木朗が粘り強さを示した“期末試験”だった。初回は一塁への悪送球、3回は2四球、4回はボークと、自らピンチを作り続けながら全て無失点でしのいだ。5回の死球→二盗→三盗→暴投(空振り三振)での1失点は痛かったが、たとえ160キロ台を連発しなくても、大事な試合で出せるものを出し切った。

投げなかった1年目、投げ始めた2年目を経て、20歳での3年目。「1年目は緊張だったりとか。2年目は少し慣れてきて、3年目、今は何も思わないです」と印象的な言葉でキャンプインした。何も思わない-。平然と球春を迎えても数字は雄弁だ。2月19日、沖縄・名護。今季初実戦の初球でいきなりプロ入り後最速となる161キロを投げ、日本ハム清水のバットをへし折った。3月の開幕直後にいきなり自己最速164キロを投げ、4月には完全試合に13者連続奪三振に17イニング連続パーフェクト。注目度は球界の枠も、国境さえも超えていった。

平均球速帯は157~161キロだった。昨季より6キロ増。体感的な出力は変えていない。「地道にトレーニングしてきたのが、少しずつですけど成果として表れてきてくれてるのかな」。今季の直球平均球速は158・3キロ。投じた160キロ台は計340球。計測なし3球を除く全1009球の割合では、33・7%の大台到達と類を見ない数値だ。一方、後半戦の160キロ台は16球のみ。疲労もあって6月の交流戦中盤から少しずつ、球速も防御率も落ちていった。さらなる進化に、フィールディングとスタミナは継続課題になる。

あと1勝で10勝、あと1キロで165キロだった。規定投球回まであと13回少々。あと4人アウトにすれば防御率は1点台だった。ヤクルト村上とともに球史に残る数字を示し、いくつか残る「あと○○」が大きな余地を感じさせる。「1年間、ローテーションで回ること」という目標はほぼクリア。強烈な投球能力を前提として掲げる、次の目標が楽しみだ。【金子真仁】

 

○…佐々木朗はソフトバンク戦後に「大きなケガなく、1年間投げられたことが一番の収穫かなと思います」と今季を振り返った。終盤には疲労回復で登板間隔も空いたが「他の投手みたいに200イニングとかをいきなり投げれるとは自分では思っていなかったですし、その中で140イニング近く投げたかったので、そこ(129回1/3)はすごく良かったかなと思います」と完走への収穫を口にした。この日は4盗塁を決められるなど課題も残る。井口監督は「来年以降クリアできるようにしていかないと、足をすくわれることもあると思いますので」とさらなる成長を願っていた。