56号&3冠王ヤ!! ヤクルト村上宗隆内野手(22)が、今季最終戦で日本選手シーズン最多となる56号本塁打を放ち、史上最年少の3冠王を獲得した。

7回先頭、DeNA入江から右翼席へ。9月13日巨人戦以来、61打席ぶりの1発で、64年王貞治(巨人)の55本を上回った。打率3割1分8厘、56本塁打、134打点でレギュラーシーズン全日程が終了。04年松中信彦(ダイエー)以来18年ぶり史上8人目、令和初の3冠王に輝いた。

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最後の最後で「村神様」がついに「世界のホームラン王」を超えた! 7回、DeNA入江の初球、内角高め151キロ直球を捉えた村上の打球が右翼席に弾んだ。軽くジャンプして走りだすと、興奮からか、いつもより速いペースでダイヤモンドを周回。高津監督らと抱擁を交わし喜び合うと「56」のボードを手に、ファンの声援に応えた。「ホッとしました。やっと打てたなと」と笑った。

3冠王は確定していたが、試合展開からも最終打席が濃厚となる土壇場。燕党も祈るような気持ちで見守る中で体現した56号に「自分でもビックリ。最後のご褒美だと思って素直に喜びたいと思います」。3冠王に花を添え「偉大な方の記録を破ることが出来て本当にうれしいです。王さん、野村さん、落合さん。もっともっとすごい偉業を成し遂げています。僕もこれから続けていくことが大事。長いシーズンこういう成績が残せるように頑張っていきたい」とうなずいた。

重圧をはねのけた。9月13日巨人戦で55号を放って以降、より厳しさを増すマークに苦しんだ。それでも25日の優勝会見では「もっともっと押しつぶすくらいプレッシャーかけてもらいたい」と宣言。この日まで今季最長の出場13試合ノーアーチが続いたが、最後に結果を残し「プレッシャーはありましたけど、全ていい形で終われて、すごくうれしい。また1つ自分の中で成長できたかな」と納得の表情を浮かべた。

想像のはるか上をいく。入団当時の監督だった小川GMも「こんなに早く結果を残すとは」と成長に感心する。1年目の9月16日広島戦でプロ初打席初本塁打の衝撃デビューを飾ったが、その後は13打席無安打。1軍で感じた課題と向き合い、臨んだ10月のフェニックス・リーグで3打席連発を放った。最近、当時の話を改めて聞いたという。「1年目のフェニックスで変わった? と聞いたら『その通りです』と答えた。9本くらい打った? と聞くと『11試合で10本です』と訂正されたよ」。1軍の主砲となっても、1年目の宮崎で放った本数も忘れない。課題に向き合い、試行錯誤を繰り返し、そして本塁打にこだわる。現在にまでつながる下地を作った。

最年少でリーグMVPに輝いた昨年末、地元熊本で3冠王への意欲を問われ「それはもちろん」。1月の自主トレ期間中から「すべてタイトルを取れるなら取りたい」と話した。「チームの成績も満足いくシーズン。苦しい時期もありましたし、自分と向き合えた。すごく満足しています」。記録にも記憶にも残る歴史的1年を「有言実行」で締めくくった。【鈴木正章】

◆村上宗隆(むらかみ・むねたか)2000年(平12)2月2日、熊本県生まれ。九州学院では1年夏に甲子園出場。高校通算52本塁打。17年ドラフト1位でヤクルトに入団し、捕手から内野手に転向。18年9月16日広島戦でプロ初打席本塁打。19年は36本塁打、96打点で新人王。20年に最高出塁率。21年は本塁打王を獲得し、史上最年少でMVPに輝いた。同年は東京五輪日本代表として金メダルに貢献。今年7月31日阪神戦からプロ野球初の5打席連続本塁打をマークした。188センチ、97キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸2億2000万円。

▽ヤクルト・高津監督(村上の56号に) シーズン最後の打席で56本目が出るなんて、なかなかマンガにも書けないようなこと。最後、見事な1発で仕留めてくれたというのは、今年のムネを象徴しているバッティングだったのかな。

▽プロボクシング井上尚弥 シーズン日本人最多となる56号本塁打おめでとうございます! 競技は違いますが同じアスリートとして、大きな刺激を頂きました。さらなる記録更新を期待しております。

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