日米球界のレジェンド2人が、女子野球の発展に向けて共闘した。

イチロー氏(49=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が率いる草野球チーム「イチロー選抜KOBE CHIBEN」と「高校野球女子選抜」が3日、東京ドームに駆けつけたファン1万6272人の前で真剣勝負。イチロー氏のオファーを受けた西武、レッドソックスで活躍し昨年引退した松坂大輔氏(42)も初参加。2人が、09年WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)以来となる同じユニホームを着て戦った。

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「ピッチャーはイチローくん」。熱い気持ちを伝えるように“永遠の野球少年”が腕を振った。初回1死一塁で、高校野球女子選抜の3番・森崎に右中間を破る先制の適時三塁打を許すと、表情が少し変わった。女子野球界では速球の130キロ台直球に変化球を交ぜ、2回以降は無失点。9回を被安打2の14奪三振、131球で完投勝利。滝のような汗をぬぐい、ベンチでは炭酸水を何本も飲んだ。内野席はファンで埋まり「今日のゲームはここにいるすべての方が作り上げてくれたもの。みんながいい空気のなかで野球が出来て、でも真剣勝負で。なんともいえない充実感があります」と感謝した。

肌で女子野球のレベルアップを感じた。昨年12月に初めて行った高校女子選抜との試合は足をつりながらも147球で完封。しかし今年は、初回で違いを感じた。「レベルが全然違うよね。びっくりした」。実は昨年の熱投で、翌日から肩が上がらず。「初めて肩がぶっ壊れた。ひょっとしたら(今日)投げられないかもしれませんと伝えていた」。それでも、19年の引退試合以来の東京ドームをモチベーションに、8月中旬から投球練習を再開した。

夢だった松坂氏とのプレーが実現した。昨年、西武での引退セレモニーに登場。実はその後、ロッカールームに「KOBE CHIBEN」の背番号18のユニホームを置くサプライズを仕かけていた。「西武で入ってきたとき、将来は同じチームで出来たらと思っていた。実現できて、続けていけたらいい」。レジェンド2人がタッグを組んだ。

「おじさん疲れたよ」。試合後に行われた女子選手強化プログラムの質疑応答の時間。そう言って、グラウンドに座った。「野球は楽しいこと、感動することがある。僕もできる限り続けるので、ぜひ続けてください」。高3という人生の岐路に立つ選手たちへ、熱いメッセージを送った。【保坂恭子】

◆イチロー氏と松坂氏 日本のプロ野球で99、00年に対戦。99年5月16日(西武ドーム)での初対戦で3打席連続三振を奪った松坂氏は「今日で自信から確信に変わったと思います」とプロでやれる手応えを口にした。日本通算34打数8安打(打率2割3分5厘)、1本塁打、4三振。大リーグでは07~12年に対戦し、27打数7安打(2割5分9厘)、本塁打なし、4三振。06、09年のWBCでは、ともに優勝メンバー。昨年12月4日、松坂氏の引退セレモニー(メットライフドーム)では、スーツ姿のイチロー氏がサプライズで登場し、花束を渡した。

○…全日本女子野球連盟の山田博子会長は、初めての有観客開催となり、関係者や観客に感謝した。「最高の舞台で試合をさせていただき、たくさんの方に見ていただいてうれしい」と話した。スタンドでは、観客から「女子選手も上手ですね」と声をかけられたという。「持論は、連盟は将来をつくる団体でないといけないと思っている。これから、さらに将来につなげていきたい」と話した。