プロ野球事業は、まだまだ伸びる。日本野球機構(NPB)理事会が5日、開かれ、元経団連会長の榊原定征氏(79)が会長に選任され、プロ野球の15代コミッショナーに就任した。任期は2年間。自らの役割を「プロ野球を健全に発展させること」とし、経済人らしく数字で訴えた。

榊原氏 MLBとNPBを比較したい。アメリカの人口は3億3000万で、日本は1億2000万。球団数はアメリカが30で、日本が12。入場者数はアメリカが年間7200万~7300万。日本は2000万ほど。いずれも、ほぼ3対1です。ところが、売り上げ、事業規模になると、日本はアメリカの10分の1とか、8分の1とかになる。アメリカのやり方を参考にして、事業拡大の余地があるのではないか。

少ないことを嘆くのではなく、むしろプラスに捉えた。拡大の方策について「具体的な案はこれから」としながらも大枠を示した。

榊原氏 新しい周辺事業。NPBはeスポーツやデジタル関連の事業を研究している。次に国際化の推進。最近は中国でも野球が活発化している。アジア圏との交流に可能性があるのでは。

ただし、スポーツ振興くじに加わることは考えていない。

榊原氏 ベッティングはやらないのが基本的な原則。野球は青少年、女性も含め、健全なスポーツ。賭けの対象になるのは避けるべき。

神奈川・横須賀生まれ。海軍の父を戦争で亡くした。社会のために高潔であるべき、という思いが強い。傘寿を前にして、関西電力取締役会長など今でも10ほどの仕事を掛け持つ。

榊原氏 仕事をやっている間は、それに没頭する。そこに喜びとか、自己実現とか、社会貢献できている満足感もあります。そういったことをモチベーションにやっています。

子どもの頃は巨人ファン。三角ベースでどろんこになって遊び、短波ラジオで野球中継を聞いた。「好きなことに貢献できる。こんなうれしいこと、ないです」。モチベーションの1つに、コミッショナーの大役が加わった。【古川真弥】

◆榊原定征(さかきばら・さだゆき)1943年(昭18)3月22日、神奈川県横須賀市生まれ。名大大学院工学研究科卒。67年に東洋レーヨン(現東レ)入社。同社では02年から代表取締役社長、10~15年5月まで代表取締役会長。14年6月には日本経済団体連合会の第4代会長に就任し、4年務めた(現在は名誉会長)。20年6月から関西電力の取締役会長。

◆理事会・実行委員会で決まったその他の主な事項 (1)元東レ役員の倉持修祥氏がNPB常務理事、小泉慎一氏が会長補佐に就任。(2)来年のNPB副会長に、日本ハム三好健二理事とヤクルト江幡秀則理事が就任。(3)来季の「NPB AWARDS」を23年11月28日に都内でファンを入れて行う。(4)ファーム検討委員会の小委員会が発足。メンバーは日本ハム、ヤクルト、西武、巨人、ソフトバンク、阪神。