西武中村剛也内野手(39)の自主トレ会見を終え、30分ほど昼休憩した。再び、室内練習場の扉を開く。1歩踏み入れるとすぐに目が合って、すばらしい笑顔で先制された。

「こんにちは!」

育成ドラフト4位の是沢涼輔捕手(22=法大)が、1人でウオーミングアップをしていた。16日は新人合同自主トレの休養日。疲れもたまる頃合いで、そう簡単に休日返上というわけにもいかないだろう。午前中にルーキーの姿はなく、是沢も休んでいた。

「1回起きて、1度室内(練習場)に来たんですけど、ちょっとあの今日、疲れてたんで、1回部屋に戻って。肉体的にもそうですけど、精神的にも。初めていろいろな人に見られる中の練習なので」

率直に現状を説明しながら「やっぱり僕、ちょっと休むとあんまり良くないタイプなので」と汗を流すことを選んだ。

新入団選手会見で自身を「北極星」と表現し、さらに大学後輩から「火縄銃」と呼ばれていることを明かし(送球時の握りかえの遅さに由来)、見る人に強い印象を残した。

中村には自主トレ初日に「火縄銃いいやないか」とほめられた。源田とも大浴場で20分近く、話したという。さらに。

「先日、打撃練習をしていたら、栗山さんにも『ちょっと火縄銃来い』って言われて。1時間半くらい、バッティングを教えていただいて」

晴れの舞台で思い切って口にした「火縄銃」が想像以上に、チーム内に広がりつつある。「覚えてもらって、何というんですかね、そういう効果があってうれしいですね」と喜ぶ。

休日返上で練習していたら、自然と中村や柘植らの打撃練習の輪に交じった。東京6大学通算0安打のルーキーが、プロ通算454本塁打のアーチストと並んで打っている、なかなかレアな光景が広がった。

やがて、是沢が動いた。中村のもとへ。ひざを突いて話を聞き、最後は直立不動で頭を下げた。「1年目だから細かいことを気にせず思い切り振れ、とおっしゃっていただきました」。同じ若手選手たちにすすめられたとはいえ、ルーキー離れの能動さを見せた。

17日から新人合同自主トレが再開する。より実技の比率が増し、ファンの観覧も始まる。火縄銃をさらにさく裂させるチャンス。「初速は良かったので、終盤で失速しないように頑張ります」。まっすぐに突き進む。【金子真仁】