不安を乗り越えるために、最善の準備をする。侍ジャパンのロッテ佐々木朗希投手(21)が、インタビューに応じ、3月開幕のWBCに向けた心境を「不安が大きい」と明かした。最速164キロの直球や高速フォークを武器にする「完全試合男」でさえ、国際経験の未熟さ、負けられない責任が重くのしかかっている。自身の考える不安払拭法は、いま出来るベストな準備の継続だ。チームでの最終登板となる15日の練習試合ヤクルト戦(糸満)に備え、13日は沖縄・石垣島から本島へ移動。17日に日の丸を背負う宮崎合宿が始まる。【取材・構成=鎌田直秀】

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WBCの先発候補に挙がる佐々木朗。エンゼルス大谷、パドレス・ダルビッシュ、オリックス山本との4本柱が予想されている。世界の強豪相手と対戦するワクワク感があるのか、それとも不安なのか-。

「不安な気持ちのほうが大きいのかなと思います。日の丸を背負う重さだったり、相手の打者のレベルが高いこともそうですし、あとは負けられないというところで。自分のやってきた実績だったりもあまりないので」

19年春に高校日本代表候補合宿で163キロをマークし、同年夏のU18W杯では世界デビュー。だが、苦い思い出しか残っていない。直前の大学日本代表との試合では右手中指の血マメの影響で初回12球で降板。本番でも韓国戦に先発し1回19球でマウンドを降りた。

「まったく別物なのでリベンジの気持ちはないですけれど、力になれないもどかしさはあったので、今回は自分からこけることがないように。自分の出来ることを100%出し切って貢献したい。不安があるからかは分からないですけれど、常にいろいろな準備をした上でマウンドに立っている。技術、体力、メンタルもすべてにおいてレベルアップしているかなと思う」

準備を最も重要視してきた。それは受け身だった野球環境や、腰や股関節など成長期のケガに悩まされて1度は野球を辞めようとさえ思ったことさえある中学時代に原点がある。

「中学校の時に野球から逃げ出したくなったことがあります。ケガだけでなく、自分のためにやっている感じがしなかったので。結果も出なかったですし。やらされると、練習を決めた人の顔色をうかがいながらやったりして、その人の満足感で自分も満足する感じ。そういうことがあまり好きじゃなかった。自分で気づいて、高校もあまり野球が強くないところを選びました」。

岩手・大船渡高では自分たちで練習メニューを考え、自主性が尊重された。股関節などのケガもあったが「考える力」も成長した3年間。

「ケガして野球が出来なかったのは本当につらかったですし、ケガしなければこういう思いをしなくて済むんだなとは思った。どうしたらと考えた時に、元気な時にケアを怠らず練習出来るかだと思った。元気な時はアップしないで投げられたりするとかもあるので、勘違いしないようにメンタルをコントロールしています」

体のケアなどに関して数多くの助言をもらった関係者には感謝の気持ちでいっぱいだ。世論では賛否両論あった1試合。出場しないまま甲子園にあと1勝で届かなかった高3夏の岩手大会決勝で、恩師が「故障を防ぐため」とした決断についても言及した。

「特になんとも思わないですけれど、いろいろな体のことだったり、投球の障害とかを学んでいくうえで良かったかもしれないし、関係ないかもしれない。それは分からないので、そんな感じです」

ロッテ入団。完全試合。そして日本代表入り。自分と向き合い、考え、日々積み重ねてきたからこそ今がある。侍ジャパン栗山監督や投手コーチを兼務する吉井監督にも感謝している。

「僕が自主練習が終わった時に知らない番号から電話がかかってきて、出るか迷ったんですけれど、出たら栗山さんで。『一緒に戦ってほしい。朗希のパフォーマンスを出せば相手をやっつけられる』と言ってもらいました。自分はやらされることが合う感じではないと思うので、プロになってからもある意味好きにやらせてもらっているのは吉井さんがいたから。代表でも近くにいてくれる存在はメンタル的にもすごく安心出来ます」

日本のために、支えてくれた人たちのために、勝つために。そして自分のために-。準備するだけ。

「なによりケガなく練習出来ていていいなと思います。健康で元気な時に出来ることを、体が持つ限り精いっぱいやりたい。結果はそれが出来ればついてくると思っています」

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