日本ハムの新球場エスコンフィールドのこけら落としで、「マー君」が変わらぬ存在感を示した。日本では11年ぶりの開幕投手を務めた楽天田中将大投手(34)が、5回2/3を2安打1失点。変化球を効果的に織り交ぜながら、4回までは完全投球。6回2死二、三塁で2点差に迫られて降板したが、駒大苫小牧高時代を過ごした北の大地で力投した。自身NPBの開幕戦では初勝利、日米通算191勝目で、チームを勢いづけた。

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変わったものと、変わらぬものがある。“第2の故郷”での開幕マウンド。試合前は日本ハムファンからも温かい拍手や声援が送られた。「北海道の人の温かさは高校入学直前から感じていた。忘れられてないんだなって。ありがたいですね」とほほえんだ。

高校野球界を沸かせてから17年。当時と打って変わり、試合中は完全アウェー状態。満員の新球場で、日本ハムの応援歌が流れる中、球児のときと変わらぬ鋭い眼光で腕を振り続けた。「向こうの大きな声援はありましたけど、こっちはこっちでグッと入りやすいというか。いい雰囲気が戻ってきた」と力に変えた。

直球で150キロ台に到達したのは、6回1死満塁での1球のみ。110キロ台から130キロ台のカーブ、スライダーやチェンジアップなどでコーナーを攻めた。要所ではキレのある直球で打者を差し込み、スプリットで翻弄(ほんろう)。4回までパーフェクト投球を見せた。高校時代を含め若き日のように、剛速球を連発させなくても、日米で積み重ねた経験がある。熟練した投球で試合を作った。

楽天に復帰してから2年間で13勝21敗。納得のいく数字は残すことができなかった。巻き返しへ、オフ期間からフォームを改良。変化を恐れずに突き進んできた。同じ場所にはとどまらない。5回は1死一、二塁のピンチを切り抜け、雄たけびを上げた。「声出し応援があるということで、熱気にも押されてですね。自分の感情が爆発しました」と、内なる思いを発露した。

それでも6回の途中で降板したことを悔いた。「次の登板に向けて、同じようなミスを繰り返してはいけない。少し慎重にやりすぎていた部分もある」。勝利に導きはしたものの、理想の投球はまだ先だ。

今でも頭に強く残っているのは、13年の日本一を達成した際に行われた仙台でのパレード。「そこ目指して頑張りたい」と力を込める。今年の最後こそは、東北のファンと喜びたい。実現へ向け、さらなる変化を続けていく。【湯本勝大】

▼田中将が日本では12年ロッテ戦以来2度目の開幕投手を白星で飾った。プロ野球で11年ぶりの開幕投手は02年→13年藤井(DeNA)に並ぶ最長ブランクだった。12年ロッテ戦は敗戦投手になっており、日本ではこの日が初の開幕戦勝利。大リーグ時代の田中将はヤンキースで開幕投手を4度経験し、19年オリオールズ戦で白星をマーク。日米で開幕投手を務めた日本人投手は昨年の大谷(エンゼルス)まで7人いるが、両方で白星は野茂英雄(日本1勝、米大2勝)黒田博樹(日本3勝、米大1勝)に次いで3人目。