広島にとって、手痛い逆転負けとなった。王者阪神の強さを痛感し、1位球団に与えられる1勝のアドバンテージも重くのしかかる。

バスへ向かう通路に虎党の歓喜の合唱が漏れ聞こえる中、新井監督は毅然(きぜん)としていた。「しっかり切り替えて、明日に入っていきたい」。まだ初戦が終わったばかり。勢いが止まってこそ、チームの真価は問われる。

同点の5回だった。1死から広島バッテリーは7番坂本を追い込みながら、内角高めが右腕を直撃する死球に。敵地は大ブーイングに包まれ、広島にとっても痛い死球だった。バッテリーを含めて間を取ることなく、球場の空気が落ち着かないまま木浪、投手村上、近本に3連打。死球からわずか4球で3失点に、ブーイングから歓声の連続でスタンドのボルテージは最高潮に達し、連勝でファーストステージを突破した勢いも黄色の波にのみ込まれた。

新井監督は下を向かない。バッテリーはもちろん、約3カ月ぶり1軍で記録に表れない守備のミスがあった韮沢も、責めることはしなかった。試合前、選手に伝えていた。「今日からとにかく楽しんで。お祭りだ。“お祭り忍者”だっていう形で。OK? さあ行こう!」。90年にリリースされた曲名が選手に伝わらなくても、明るく前向きにプレーしようというメッセージは伝わった。失うものは何もない。前を向いて進むのみ。敗戦後の新井監督の姿が、ナインを鼓舞するようだった。【前原淳】

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