投打大車輪の“虎の村神様”で快勝発進だ。「2023JERAクライマックスシリーズ セ」のファイナルステージが甲子園で開幕。セ界王者の阪神は先発村上頌樹投手(25)が投げては6回1失点、打っては同点の5回に決勝打を放つ二刀流の活躍で、チームをアドバンテージの1勝を含む2連勝に導いた。同じくロッテとの初戦を制したパ王者のオリックスとの「関西シリーズ」が実現する可能性が92%に高まった。19日に一気の王手を目指す。

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村上がほえた。右拳を目いっぱい握った。打球が一塁線を抜ける。勝ち越しの1点が入る。前売り完売の甲子園は狂喜乱舞。二塁ベース上には、両手バンザイの背番号41がいた。

「ゲッツーだけはならないように。打った瞬間『ヤバイ』と思ったけど、抜けたので、よしっ! て。勝ちたい試合、何とか点が取れてよかった」

同点の5回1死一、三塁。「代打あるんかな」と思った。岡田監督のサインは「打て」。覚悟を決めた。「初球からいこうと」-。

広島九里の初球内角チェンジアップを引っ張り、一塁・韮沢の右を抜ける適時二塁打。プロ3年目の初適時打&初打点が、CS初戦の大舞台で飛び出した。

「今日はそこまで良くなかったけど、打席に立たせてもらった。なんとか6回はしのごうと思いました」

5回を終えた時点で、自己ワーストタイの3四球を許し球数87。100球に迫りながら「一番抑えてるピッチャーやから、そらもう最初から代打とか全然考えてなかった」と、打席に送り出してくれた指揮官の期待にバットで応えた。6回3安打1失点。ポストシーズン初登板で「勝利投手+V打」は史上初の快挙だ。

まだ「虎の村神様」になる開幕前。同じ兵庫・淡路島出身の先輩近本に「バッテ(打撃用手袋)ください! かっこいいっす」とおねだりしたことがある。

近本 俺、手小さいで?

村上 僕も小さいんで大丈夫です!

そんな猛アタックが実り、プレゼントしてくれた。白と黒が基調で「Koji」と刺しゅうが施された戦闘用具。シーズン途中には「ボロボロになってるやろ?」と新品をくれた。先輩からの2個目の「バッテ」は、昨季までプロ通算0勝の右腕が1年間戦い抜いた証し。5回は近本も2点打で続き、初めてそろってお立ち台に立った。

「何かしてくるのは分かっていた。準備はしていました」。高校野球さながらのガムシャラ野球で臨むと宣言していた新井カープを粉砕し、アドバンテージを含め2勝発進。これがセ界王者・阪神だ。【中野椋】

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