阪神村上頌樹投手(25)が、充実の汗をぬぐった。4回までパーフェクト投球で7回2安打無失点。オリックス山本に投げ勝った。前年まで0勝の投手が日本シリーズ開幕投手を務めて勝利を挙げたのは新人、外国人投手を除けば、プロ野球初の快挙だ。

「交流戦のリベンジがしたいと思っていた。いい緊張が力に変わりました」

2回、紅林を自己最速更新の152キロ直球で空振り三振。初球からストライクを奪い、昨年の覇者を攻めた。唯一得点圏に走者を背負った5回2死一、二塁では若月を三ゴロ。大役を任され、燃えに燃えた。

あの日、村上は笑っていた。6月13日、本拠地甲子園でのオリックス戦。山本と投げ合い、8回2失点で負け投手となった。3回に見逃し三振に倒れた時、思わず白い歯をこぼした。

「ああいう変化球投げられたら、俺ももっと楽やろな~って」

カーブだった。目線を1度上にやった瞬間、ボールゾーンから鋭く変化してきた。「うわっ…すっげ~…って。手を動かそうと思っても動かなかった」。

空振り三振か、見逃し三振か。理想を問われると後者を選ぶタイプ。バットを出させなければ、リスクは一切ない。ライバルの宝刀は、究極の理想だった。

「まだまだ及ばない。だけど、僕もあれから4カ月たって成長してきたので」 同学年の山本の存在は、スターダムを駆け上がる中、明確な道しるべとなった。レギュラーシーズンを10勝、防御率1・75でフィニッシュ。強力な自信を身にまとい、「楽しむことができた」と大一番でリベンジした。

交流戦で3試合戦ったとはいえ、オリックスは未知の相手。岡田監督からは「探りを入れるには一番いい投手やで」と抜群のコントロールを生かした“探偵役”にも任命されていた。指令通りの100球に「やってくれると信じていました」と指揮官。虎が村上で先勝だ。【中野椋】

▽阪神加治屋(2番手で1回無失点)「初戦で投げられて、感覚自体もよかった。初戦を取れたのはすごく大きいですし、明日も勝って甲子園に戻りたいと思います」

▽阪神岩貞(9回に登板し、1イニングを無安打無失点3奪三振)「いい投球ができた。練習からやってきたことをこういう局面でできたので、しっかり継続していきたいです」

【熱戦!日本シリーズ特集ページ】