今季終盤、米ジャイアンツ傘下でプレーした筒香嘉智外野手(32)が、故郷の和歌山・橋本市で新球場完成に覚悟を新たにした。

2日、自費約2億円を投じて造られた「YOSHITOMO TSUTSUGO SPORTS ACADEMY」の竣工(しゅんこう)式・施設お披露目会にDeNA柴田らと出席。同球場を本拠地として新設された小学生硬式野球チーム「和歌山橋本Atta Boys」の子どもたちとも交流し、諦めない心を強調した。

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筒香がキレイに生えそろった天然芝を踏み締めながら言った。「諦めるのは改めて簡単だなと。どの人が選択をしても、諦める選択というのは一番楽な選択だなと感じてます」。子どもたちに諦めないこと、失敗の大事さを改めて強調した。自身は異国の地で4年間、異なるカテゴリーで10チーム以上を転々としながら、挑戦を続けている。

自費約2億円を投じた新球場から、世界へ羽ばたく人材を育成する。ドミニカ共和国のメジャー球団のアカデミーを参考に造られ、天然芝はエンゼルスタジアムとドジャースタジアムと同品種。日本の野球場での使用は初めてとなる。筒香は「最終的には自分の決断で、自分がやった方がいいなと。未来ある子どもたちですので、つぶすのも大人ですし、生かすのも大人。つぶさない指導をしていきたい」と理念を掲げた。

今後は小学1年から6年を対象に新設された小学生硬式野球チーム「和歌山橋本Atta Boys」の本拠地として使用される。子どもたちを前に「野球選手になることがゴールではない。世の中に出ていろいろな競争を勝ち取る、いろいろな仲間と素晴らしい社会にしていくという土台作りができる場所にしたい」と野球界だけでなく日本の将来を思い描いた。

手本になるべく、来季も米国で挑戦を続ける。代理人のジョエル・ウルフ氏は11月に「彼は決してあきらめない。近いうちにメジャーキャンプの招待選手として契約することに自信を持っている」と力説した。ジャイアンツのザイディ編成本部長も交渉継続を明かしており、今季終盤、傘下マイナーに所属したジャイアンツで春季キャンプ招待選手としてプレーすることが濃厚。野球少年が発表した「いつかプロで一緒にプレーしたいです」という夢を「実現すれば喜ばしいこと。僕も頑張ります」と受け止めた筒香。挑戦し続ける背中が未来へとつながっていく。【小早川宗一郎】

○…「TSUTSUGO SPORTS ACADEMY」のメイングラウンドは、内外野天然芝で両翼100メートル、中堅120メートル。サブグラウンドと625平方メートルの室内練習場も隣接する。日本の野球場で唯一の芝生(TAHOMA31)にこだわり、筒香は「田舎のような田んぼで走るとかをやることによって、けがの回避の技を自分で身につけたりする。この芝生で思い切ってプレーしてほしい」と説明した。

◆筒香の今季 1月にレンジャーズとマイナー契約を結び、招待選手としてキャンプに参加したがメジャー昇格ならず。6月にオプトアウト(契約破棄)の権利を行使し退団した。米独立リーグのスタテンアイランドでプレー後、8月にジャイアンツとマイナー契約。3Aでは2球団通算で55試合、打率2割4分7厘、6本塁打、34打点だった。