阪神電鉄の久須勇介社長(62)、松本眞尼崎市長(44)が26日、都内の環境省で伊藤信太郎環境相(70)と3者対談を行った。25年3月に尼崎市に開業予定の阪神2軍施設「ゼロカーボンベースボールパーク」が、環境省が選定する脱炭素先行地域に選ばれており、同地域に選出されている自治体・施設の中で初めて完成する事例として注目が集まっている。3者の熱い思いが言葉となった。
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松本市長 今日はお時間いただいてありがとうございます。令和7年2月に、尼崎は兵庫の一番大阪よりなんですけども、今、隣の西宮に甲子園球場がありまして、その隣に今度、タイガースファーム施設という2軍球場ができるということで電鉄さんと連携してやらせていただいています。せっかくつくるならということで、環境省さんからもご提案をいただきながら、ゼロカーボンベースボールパークをつくろうということで、本市の公園内に電鉄さんが工夫をいただいて、ゼロカーボンベースボールパークをつくる準備をしております。もちろん、球場で太陽光パネルなどさまざまな取り組みをして、本市の周辺の公園もありますので、そこの整備もして、そこもゼロカーボンで。また、駅も合わせてゼロカーボンでやっていく。こういう形で一体として、本当にゼロに向けて、脱炭素に向けて取り組みを進めていきたいと。関西を引っ張って行きたいということで、ごあいさつに参りました。
伊藤大臣 まずは阪神タイガース、日本一おめでとうございます。
久須社長 ありがとうございます。
伊藤大臣 やっぱり脱炭素、今ね気候変動とか、世界的に重要な国の課題だと思います。そういう中で、尼崎市と阪神電鉄さんと素晴らしいことだと思いますけども。環境省としても、2050年カーボンニュートラル、その前に2030年に46%、できれば50%の削減に向けて、二酸化炭素の削減を試みてますので、それを実現するにはやっぱり、国、地域、そして企業が一体となって、むしろ、地域、地方から先行的な試みを広めていくのが非常に重要だと思っておりますので、今度の尼崎市、また阪神電鉄さん、またタイガースのいろんなことの試みを後押ししたいと思っています。それから、第1回目の脱炭素先行地域になられてますので、トップランナーとして素晴らしい例を実現していくと、そのことで尼崎市、阪神電鉄さん、阪神タイガースさんの試みが日本中にモデルとして広まっていくと期待しております。
松本市長 阪神タイガースの球場の予告のホームページにあるんですけど、阪神タイガース球場ファーム施設じゃなくて「ゼロカーボンベースボールパーク」と、こういう形でアピールさせていただいております。尼崎南部の小田南公園を球場施設に。実は、尼崎は公害で有名な地域でして。
伊藤大臣 記憶にありますね。
松本市長 非常に南部は公害の町として知られてまして。そこの南部の公園を整備することが特徴です。球場が2つあって、周辺にいろんな公園があって。周辺は電鉄さんの線路がかかっていると。今回整備するのは球場そのものと、電鉄の駅を全部設備投資いただいて、太陽光パネルを設置して脱炭素をしていくと。本市としては、駅から球場までのアプローチを、電球ひとつとっても太陽光にして、公園の周辺のアプローチも含めて、全てを脱炭素の対象地域に、それを環境省からしていただいたんですけど、そういう形で思い切った投資をしていくので、この施設ができることをきっかけに、公害の地域だった尼崎の南部エリア、産業の町が、環境で引っ張っていけると、そういう雰囲気に変わってくるんじゃないかなと。アピールしていこうと、変わっていくぞということで、デコ活じゃないですけど、広がっていく取り組みをしていきたいなと。
伊藤大臣 統合的なアプローチで素晴らしいですね。環境省も暮らしから脱炭素していこうと、それをまさに実践的にやられてるのは素晴らしいですね。
久須社長 大臣から最初に日本一のお祝いの言葉いただきまして、誠にありがとうございます。地域、ファンみなさんの熱い声援で後押ししていただいて、日本一に導いてくれたのかなと感じています。当社は尼崎市内も線路が走っているわけですけども、尼崎市の南部地域を重点エリアと位置づけて、2021年に尼崎市さんとまちづくり協定を締結しまして、いろいろと沿線の都市再生を目指した取り組みを続けているわけですけども。その中で2025年の2月に予定しております。
伊藤環境相 あと2年ですね。
久須社長 はい、もう1年半ですね。再来年の2月には完成する小田南公園のタイガースの2軍施設の移転というのはですね、南部地域の活性化の起爆剤としてですね、我々タイガースにはですね、選手育成拠点の充実ということで、さらなる強化、常勝軍団に向けてですね…。
伊藤環境相 環境意識を持った選手がそろってますね、もちろん強い選手が大事と思いますけど。
久須社長 大変期待の大きい事業でございます。ゼロカーボンベースボールパークということで、全国で初めて自家発電自家消費で完全ゼロカーボンということで、脱炭素化された野球施設を実現させていただこうかなと思っております。このことが、タイガースによるアナウンス効果でですね、ぜひ、御省からも第1回の選定地域に選決されましたので、タイガースを通じて、ここでの活動をアピールしていってですね、持続可能な社会の実現に向けて少しでも何かできたらなと考えてございます。また、ここの球場はタイガースと市民のみなさまの公園がですね、一体化しているので、より身近にタイガースを感じていただけるにぎわいと、魅力あふれる球場、また防災機能も含めて備えることで、地域に。欠かすことのできない公園を目指してまいりたいと思っております。
伊藤大臣 素晴らしい取り組みだと思います。南部地域の活性化、そして阪神タイガースの選手育成拠点の充実。スポーツも強く環境意識を持った選手ですね。そういったことを脱炭素というツールを利用して実現すると。市民やファンに広がりが期待できると思います。これまでも積極的な尼崎市ですけど、脱炭素だけでなくて使い捨てのプラスチック。これの削減などを含む環境配慮の取り組みに阪神グループと連携して取り組まれているので、これも大変意義深いことだと思います。この地域含め、魅力ある地域が広がっていくように、全国の地域やスポーツチームが推進するようにぜひ力強く進めていただきたいと期待しているところです。
久須社長 今回のプロジェクトは、市さんの方から当社の方に、南部地域の活性化、治安マナーなどのイメージアップを図りたいというご意向で、ご提案いただいたものですので、失礼な言い方ですけど、市長が仰った「公害の町尼崎」というような少しネガティブなイメージを払拭できるように我々もお手伝いできたらと思いますし、地域との連携が、鉄道会社としてお役に立てるのは本望だと思いますので、我々の取り組みが、他のモデルケースとなって、他の鉄道会社とか、いろんな事業者さんに広がるのが望みでございます。タイガースは、今回の移転によって選手の練習環境が格段によくなるので、選手の育成には期待しているところですけども、いろんな活動通じて、タイガースというコンテンツで情報発信して、持続可能な社会の実現に手伝っていきたいなと思っています。常に、甲子園球場も脱炭素の取り組みをしてまして。甲子園エコチャレンジを銘打ちまして。甲子園の銀傘、屋根ですね。屋根の上には太陽光パネルを設置して再生可能エネルギーを活用していますし、二酸化炭素(CO2)排出量の削減ということで、ナイター設備は全てLED化させていただいて、昔ながらカクテル光線のもと、しかし省エネで、LEDですからいろんな画像を映せるということで、お客さんの楽しみをつくりあげると。手前みそですけども、社団法人の日本照明学会からも日本照明賞をいただいたりしたもんです。それに習ってというわけではないですけども、この尼崎の取り組みにおきましてもいろいろとやっていきたいと思っておりまして。隣に日鉄鋼板さんの工場があるんですけども、こちらから新技術をいただいて、金属断熱サンドイッチパネルで「イソバンドPro2」というものをですね、建物に採用させていただいて。しっかりした遮音性もありながら耐久性もあるという材質を使わせていただきながら、いろんな方とパートナーシップを組みながらアピールしていこうかなと思っております。ネーミングライツも球場にいただきまして、日鉄鋼板SGLスタジアム尼崎というようなことですね、いろんな企業さんとアライアンスの中でPRしていこうと考えておりますので、引き続きご支援をお願いしたいと思っております。
伊藤大臣 甲子園ね、これも脱炭素のためのいろんな取り組みなさってる。企業連携の中で脱炭素が、今、環境産業ということも言われてますので、進めていくのは大事だと思います。暮らしとか地域から脱炭素を進めていうことが強いんですけども、企業もやっているのが大事だと思いますし、尼崎市はデコ活宣言してただいて、まさに自治体と企業が連携してやっていただいている。引き続き環境を守りながら地方創生、スポーツ振興を進めていっていただきたいと思っております。
松本市長 いろんなことをやっておりまして、尼崎コインという取り組みもしておりまして。地域通貨、電子コインです。財源は市で措置しているのですけど、エコな活動したらポイントがもらえると。お小遣い稼ぎになる仕組みをつくっているんです。我々も地域通貨を使って消費活性化とエコができるということをやっておりますので。
伊藤大臣 環境省としてもできる限りの応援をしたいし、取り組みがもっと全国に広がるようにアピールも進めてまいりたい。さらに、これから、ここで終わりじゃなく、さらに進めていただきたい。トップランナーでいらっしゃいますので、脱炭素、環境政策を加速化していただければありがたい。一緒に走って行きたいと思っております。あらためて、阪神日本一おめでとうございます。こっちも、日本一になる。脱炭素の取り組みも日本一になる。
久須社長 そうですね、日本一目指して頑張ります。