阪神の2軍選手寮「虎風荘」で21日、珍事件が起こった。建物3階の高さの屋根付近に猫が出現。

高さ8メートル前後あるとみられる位置で、動けない様子でいた。この日、関係者や選手らが心配そうにながめていた。最初の発見者はドラフト5位石黒佑弥投手(22=JR西日本)だという。「朝起きたらいましたね」と証言。ちょうど、虎風荘の石黒の部屋から見られる位置に猫が座り込んでおり、すぐに分かったようだ。

野口恭佑外野手(23)は、猫がいた位置から最も近い部屋で生活している。「昨日からいたかな…。いたって言われればいたような。でも、見つけたのは今日です。朝起きたら、ボールか重りか何かかなって。助けにいけそうだけどなあ…」。そこまで言うと、トレーナーから「やめておいてね」と制止されていた。

トレーニングルームに移動する際には、ドラフト1位下村海翔投手(21=青学大)も立ち止まった。「どっから登ったんだろ。弱ってないかな」と心配顔。同3位の山田脩也内野手(18=仙台育英)は「僕、猫アレルギーなんですよね。実家では飼ってるんですけど」と意外な事実を明かした。育成1位の松原快投手(24=日本海L・富山)は、野口の部屋が猫から一番近い位置と知ると「何か持ってるなあ」と笑った。

トレーニングに打ち込んでいた高寺望夢内野手(21)はトレーニングルームから身を乗り出し「ここまできたら結末気になりますね! 教えてくださいね!」と興味津々な様子だった。関係者は「前代未聞やな」とぽつり。雨も降る時間帯があった中、ずっと同じ場所から動かない猫が、多くの人の頭から離れなかった1日だ。

球団は午後になって、西宮市消防署に依頼の電話を入れた。けたたましいサイレン音とともに、午後2時20分ごろに車両が到着。この珍事に、3人の隊員が鳴尾浜に派遣された。

ほのぼのした空気が流れる一方、救出は難航した。脚立や巨大な網を駆使しても捕まらない。島本浩也投手(30)、桐敷拓馬投手(24)、島田海吏外野手(27)、さらにはオリオールズをFAとなっている藤浪晋太郎投手(29)まで立ち止まり、様子を見守った。

救出作業開始後、約40分。最後は隊員が屋根にのぼり、棒を駆使して猫を逃がす作戦を実行。最終的に高所から脱出し、その後、猫は全速力で走って逃げた。

隊員の1人は「(このようなアクシデントは)たまにあるんですよ、猫は」と振り返った。思わぬ猫騒動から、動物を心配する選手たちの素顔が垣間見えた。【中野椋】