巨人坂本勇人内野手(35)が“神様”を目前にしたまま勝利をもたらした。

初回1死満塁で中犠飛を放ち先制。これが決勝点となった。前夜に2安打で通算2350安打とし、“打撃の神様”こと川上哲治氏にあと1本と迫るプロ野球史上13位かつ球団史上3位の記録は、10日以降に持ち越し。それでもチームは中日に2連勝で2カード連続勝ち越しを収め、貯金2として首位阪神に0・5ゲーム差で肉薄した。

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坂本が“引き出し”を開けた。初回1死満塁の第1打席だった。初球。中日小笠原の144キロ直球に、すり足でスイングした。バックネット裏へのファウルとなり、わずかに差し込まれた。

2球目。冷静に状況を見極め、求められる役割に徹した。今度は左足を上げないノーステップ。内寄りの145キロ直球にタイミングを合わせた。「外野フライでもいい場面だったので。何とかね」とうまくバットに乗せた打球を、狙い通り中堅後方に飛ばす。外野の頭こそ越えなかったが犠飛には十分な飛距離。今季2度目の先発だった堀田を初回から援護し「先制点は最低限だった。よかったですね」。最低限の仕事は、結果的に決勝点。勝負を決める価値ある1点となった。

ロングティーでも足の上げ方を変えながら、スイングする姿がある。日々の細かな蓄積が勝負どころで、すり足からノーステップへ切り替える対応力を生む。プロ18年目のベテラン。1打席の中での修正するすごみが、2球の中に詰まっていた。

2打席目以降は2つの遊ゴロと四球で無安打だった。残り1安打と王手をかけていた「打撃の神様」こと川上哲治氏に並ぶ記録は、目前のまま持ち越し。日本初の2000本安打を達成し、球団史上3位の通算2351安打を記録。巨人の監督としても前人未到の9年連続日本一を果たしたレジェンドが持つ領域に到達する時は、もうすぐだ。

「今の日本のプロ野球の人気は、昔の先輩たちが築いてきてくれたもの。毎日、何万人というお客さんの前でプレーできるのも、そういう人たちのおかげだと思う」

先人への感謝を忘れず、グラウンドに立ち続ける坂本が積み重ねた2350安打は現役最多。巨人、そして球界の顔として戦い続ける背番号6。勝利に導く一打で渋く輝いた。【上田悠太】

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