阪神高橋遥人投手(28)の復活星が、リハビリ組に勇気を与えていた。11日の広島戦(京セラドーム大阪)で5回4安打無失点の快投で1025日ぶりの白星を手にした左腕。21年オフに左肘クリーニング手術を行い、22年4月には左肘トミー・ジョン手術を受けるなど、計4度の手術を乗り越えた。鳴尾浜でリハビリをともにしてきた阪神小川一平投手(27)と伊藤稜投手(24)。今回の虎番リポートでは、高橋の勝利が2人にとってどのように映り、何を感じたのか、迫った。【取材・構成=村松万里子】
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大歓声を全身で浴び、3季ぶりの1軍登板で堂々の投球を披露した高橋。鳴尾浜でともに走り込み、汗を流した小川と伊藤稜の目にもしっかりと焼き付いていた。
「投げてる姿で勇気もらえるというか、リハビリ組でずっとやってたので、遥人さんも投げられてるから僕もいけるかなと思える。頑張っています」
そう話すのは伊藤稜。21年に育成ドラフト1位で入団も、すぐに左肩を痛め、リハビリを開始した。リハビリを開始した。ランニングの合間やトレーニング中に気になることがあれば高橋に質問していた。「1聞いたらもうバーンって10ぐらい返ってくるんですよ。遥人さんからも言ってくださいますし」と先輩のアドバイスに感謝する。
高橋が1軍を目指して2軍で登板を重ねるのと同時期、7月7日の日本生命とのプロ・アマ交流試合(鳴尾浜)で初めて実戦登板。高橋も小川らとともに球場で見守っていた。試合後には「まず投げられてよかったね」と声をかけられた。同じ経験をしてきたからこそ、短い言葉には思いがこもっていた。
そんな左腕が高橋の1軍復帰戦で注目したのはコントロール。5回4安打無失点、7奪三振で、与えた四球もわずか2と、持ち味の抜群の制球力が光った。「フォームが良い分、ブレがない。フォームの再現性がコントロールにつながっていると思う」。臆せずに腕を振り、躍動感あるフォームから白球を投げ込んでいた。その姿に自らを重ね、「(自分は)まだまだですね」と笑う。現在は状態を確認しながら週に2回ほどブルペンに入り、1軍マウンドを目指している。「けが明けで怖がっちゃう部分もあった。怖がってしまうと、連動とか全部おかしくなってしまう。不安を取り除いて怖がらずに投げるのが今の一番の課題と思います」。1歩先を行く先輩の姿が何よりの励みとなった。
小川は白い歯を見せながら「めちゃくちゃ嫉妬はしますけど」と率直な思いを打ち明けた。自身も23年に右肘のトミー・ジョン手術を受けた。リハビリは前に進むことばかりではない。「手術したてはこれから良くなると思うしかないので、気持ち的にプラスなんですけど。上がってきた段階でまた肘が悪くなったりとか、良くない時は気持ちも落ちます。遥人さんはそういうのが3年くらいあって結構苦しかったのかな」。長くリハビリをともにする中で、高橋のメンタル面での変化も感じた。
自身は6月に捕手を立たせた状態でのブルペン投球を行うまで回復し、次に捕手を座らせての投球を考えたタイミングで炎症。1カ月半ほど間隔を空けた。現状を「3歩進んで、2歩下がるみたいな感じではあります」と話す。そんな日々の中、高橋に加え、同じくトミー・ジョン手術から復活を果たした才木や島本の言葉が生きた。数多くのことを教わり、「トミージョンはいずれ治ると言われている。一番近くにいる先輩に聞くのが一番」と感じている。今は4月に同手術を受けたルーキーの下村に伝えることもある。「しもから結構聞かれます。『この時期どんな感じでしたか』とか。『自分もこうだったよ』とか話しますね」。阪神では術後に先輩から後輩へと経験を伝える、良き伝統ができつつある。そこに高橋の復帰登板も加わり、「けがしても投げられることを見せてくれている。追いつけ追い越せじゃないですけど、すごく刺激をもらっている仲間みたいな感じ」と闘志を燃やした。
自らの課題と向き合い、歩みを進めている2人。高橋は言葉と勇姿で仲間を勇気づけていた。



