西武のドラフト1位ルーキー菊池雄星投手(18=花巻東)が宮崎・南郷キャンプ第2クール初日となった6日、一塁けん制の練習で思わぬ課題を露呈した。渡辺久信監督(44)ら首脳陣が、一塁へけん制する際の右足の動きや方向を見て、ボークになる可能性があると指摘。“プロ仕様”へ緊急修正した。ブルペンでは直球を磨くため変化球をあえて封印し、キャンプ最多となる118球の熱投。フォームの試行錯誤が続くなど課題は山積しているが、開幕1軍へ1つ1つクリアしていく。

 雄星が思わぬところで課題を露呈した。投手陣のけん制練習が終わると、左腕の3年目武隈と2人だけマウンドに残された。一塁へのけん制の練習を行ったところで、首脳陣の厳しいチェックが入った。渡辺監督と橋本投手コーチが動作を交え指導を始めた。特に上げた右足を一塁側にステップする際の動きを確認。雄星は「これならボークになるとか、そういう話をしました」と明かした。

 雄星が一塁けん制する場合、上げた右足が少しホーム方向へ開き、踏み出した右足も本塁方向になる傾向があった。高校時代には通用しても、プロの審判には投球動作ととられ、厳しくボークを宣告される。その課題を“突貫修正”した橋本コーチは「プロの左投手は厳しくボークをとられる。(けん制の動作に)ちょっと紛らわしい点があったので」と説明した。橋本コーチも現役時代は中継ぎ左腕。一塁へ走者を出して登板するケースが多かっただけに、その経験からアドバイスを送った。

 ただ、雄星はボークすれすれのけん制も当然といった表情だった。これまでは微妙なけん制で走者と勝負してきた。「高校の時から際どいけん制をしてました。アウトにするなら(ボーク)ギリギリでと(花巻東・佐々木)監督に言われてきたので」と話した。しかしプロでは通用しないと指摘されれば、すぐに修正する。約10分間、プロ仕様の一塁けん制へのマイナーチェンジに取り組んだ。

 渡辺監督の教えにも、すぐに反応した。第2クール初日となったこの日、ブルペンに入って捕手を座らせキャンプ最多の118球を投げ込んだ。実戦を意識して徐々に解禁しつつあった変化球を封印。「監督から真っすぐを磨けといわれたので、真っすぐでフォームを固めたい」とすべて直球を投げた。

 橋本コーチは「みなさんにはもの足りなく見えるかもしれないが、考えて投げている証拠」と周囲が期待する力強いボールはまだ少ない。右足のインステップを修正するために、あえてアウトステップにするなど「2、3割の力」で投げる試行錯誤の状態が続いている。昨夏の甲子園以降では最多となる球数を投げ込んでも納得がいかず、ネットスローで再びフォームを確認したほどだった。

 目標が高いゆえに課題は山積しているが、大事にする練習を楽しむことは忘れない。ノックではグラブを泥だらけにしながらボールを追いかけ「どろんこだー!」とはしゃいだ。最後は疲れきって、グラウンドに倒れ込んだ。8日には高校の学年末試験でキャンプ地を一時離れる。宮崎に戻ってくるのは11日とあって「明日も結構多めに投げます」と予告した。1つ1つの課題と向き合い、ゆっくりだが着実に階段を上っている。【亀山泰宏】

 [2010年2月7日8時46分

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