太平洋で鍛えた水かき手首で二神がパリーグ覇者を手玉にとった。阪神ドラフト1位の二神一人投手(22=法大)が13日、10年チーム初実戦の練習試合・日本ハム戦(沖縄・宜野座)で“開幕投手”デビューを飾り、2回1安打無失点と好投した。新人離れした実戦的な投球に他球団のスコアラー陣が警戒の嵐。真弓監督も開幕ローテ入りの可能性を示唆する、インパクト抜群の全27球だった。

 雲の切れ間からのぞく南国の太陽も出番がない。ルーキー二神は己の力で光を放った。小谷野の、中田のバットが動かない。持ち前の強心臓を武器に、平然と強打者の内角を突いた。

 二神

 楽しみにしていた試合。落ち着いて投げられた。思い切って打者に向かって行こうと思った。

 プロデビュー戦がチームの“開幕投手”だ。先頭打者はハムの大卒ルーキー加藤(九州国際大)。昨年、大学日本代表で日米大学野球を戦った仲間だ。「いろんな感情が重なって投げづらかった」という相手を三飛に仕留め、波に乗った。

 初回は3者凡退。2回に入ると果敢に内を攻める。4番小谷野はカウント2-2から内角直球で見逃し三振。未来の大砲、5番中田の初球も内角直球で見逃しを奪い、2球目の外直球で右飛に仕留めた。6番今浪の右前打で完全投球はならずも、全28球中26球が直球かスライダー(カーブ1球、フォーク1球)。勝負球が甘く入ったことを反省したが、ほぼ2種類の球種だけで2回1安打無失点は間違いなく合格点だ。

 “海人”の血筋が強靱(きょうじん)なリストを生んだ。父は漁師、高知県大月町の実家は太平洋まで徒歩3分。大海原で泳ぎ続けるうちに、いつの間にか両手の指の間に「水かき」ができていた。「僕は海人なんです。水かきがあると指が開かなくてフォークが投げられないんじゃないかと思って…。(ピアニストを目指していた)漫画『ドカベン』の殿馬みたいに水かきを切った方が良いのかな、とも思いましたよ(笑)」。水泳選手などに見られる特徴「水かき」ができるほど、両手で海水をかいた。そして生まれた強い手首が今、投球を支えている。

 この日の最速は142キロに止まったが、球速以上の伸び、キレがパリーグ覇者の主力打者に通用した。評価をグングン上げる中で、真弓監督は開幕ローテ入りの可能性を問われ「このまま順調に行けばね」と期待を膨らませた。

 二神

 今日はヒットを打たれても、四球以外は勉強だと思っていた。自分のボールを投げられたことに満足。すべて収穫です。それ(開幕ローテ)に向けて準備できるよう努力したい。

 次は高知・安芸キャンプに移動後、紅白戦で若手投手としのぎを削る予定。もう、開幕1軍は夢ではない。大きく力強い右手で、がっちりつかみ取っていく。

 [2010年2月14日12時4分

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