<日本ハム2-3阪神>◇30日◇札幌ドーム

 迷わずに振り切った。阪神鳥谷敬内野手(28)が1点リードの8回、代打で打席に立った。好投を続ける日本ハム左腕武田勝と向かい合った。じっくりと相手の内角シュートを見極める。そしてカウント1-1から3球連続となったシュートを豪快に引っ張った。しっかりと腰を回転させてバットにボールを乗せる。この日最初のスイングで右翼席に美しい放物線をかけた。

 「結果はどうあれ、先頭だったので何とか塁に出ようと思っていた。打った瞬間はどうかなと。(スタンドに)入ってくれと思っていた」。

 プロ7年目、代打起用では30打席目で初の本塁打。常々「僕はホームランバッターじゃない」と口にする鳥谷が、緊迫感あふれる投手戦の中で価値ある一発をたたき込んだ。

 右手人さし指の故障で一時的な「ひと振り稼業」となっているが、打席は抜群の集中力を発揮している。これで代打では4打数3安打2打点1本塁打。前日29日のダルビッシュからの勝ち越し適時打に続いて、2試合連続打点もマークした。「代打鳥谷」の場内アナウンスに、ファンからの歓声は日増しに大きくなる。

 ただ本人は早期の先発復帰を目指している。スローイング禁止の負傷当初は遊撃で見えないボールを追って前後左右に動く「エア守備」に汗を流した。この日の試合前練習では右翼に入って必死で打球を追った。違和感なくゲームに戻れるように患部以外は高いコンディションをキープする。好調の鳥谷がスタメンに戻ってくれば、チームはさらに加速する。

 [2010年5月31日10時38分

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