<ロッテ5-2日本ハム>◇12日◇千葉マリン

 右手中指骨折から復帰したロッテ唐川侑己投手(21)が、約3カ月ぶりの登板を白星で飾った。日本ハム打線に9安打を浴びるなど毎回走者を背負ったが、要所を締めて6回2失点(自責1)。野球人生最長のブランクを乗り越え、5月4日以来の今季4勝目を挙げた。高校時代に「ビッグ3」と称された同期の中田翔内野手(21)との1軍初対決は、直球勝負ができず悔やんだものの空振り三振、四球、中飛と快打を許さなかった。

 投げられたことが幸せだった。3カ月ぶりの復帰登板を終えた唐川はお立ち台に立つと、日焼けした顔を引き締めた。「初回は緊張したんですけど、幸せをかみしめながら投げました」と話した。大観衆の声援を浴び、野球人生の節目となる、大きな挫折を乗り越えた喜びをかみしめた。

 風速10メートル前後の強風が吹く悪条件で、初回からピンチを迎えた。先頭の田中の打球は風に流されて二塁打になった。1死満塁で5番糸井を迎えてカウントは0-3。こん身の直球を3球続けて空振り三振を奪うと、続く二岡は見逃し三振。毎回走者を背負った6回9安打2失点の内容に「粘って投げられたことは収穫」と、安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 5月13日の横浜戦で右手中指に打球を受けて骨折した。全治2カ月。交流戦前までに3勝を挙げて波に乗りかけた直後のけがだった。「これだけ投げないのは初めて」「心が折れそうになった」と、不安な気持ちに襲われた。

 6月上旬、2軍本拠地の浦和球場で、唐川は1人で黙々と走り込んでいた。汗だくになって「骨がくっついてないので、まだ全然です。投げられないんで左手で投げてます」と苦笑いした。冗談交じりに聞こえたが、練習を終えた後室内練習場で、1人黙々と左投げでネットスローを繰り返す姿があった。「こんなに野球から離れたことはなかったんで。体がうずうずする」。かごにボールを詰め、投げられないもどかしさをぶつけるように一心不乱に投げ込んでいた。

 甲子園で活躍を続けている母校・成田高の活躍も刺激となった。千葉大会決勝はスタンドに足を運んで応援した。甲子園を目指して猛練習に明け暮れた高校時代を思い起こし、「もっと頑張らないといけない」と、自分を奮い立たせた。

 打線の援護を受けた2回以降は、縦に大きく曲がる90キロ台のカーブを有効に使い、持ち前の低めに伸びる直球を生かした。プロ入り前「ビッグ3」と呼ばれた同期の中田との1軍初対決には2打数無安打1三振で完勝。3打席で投げた計16球のうち変化球は12球。「真っすぐで押したかったけど、カーブでかわしてしまいました。これからも同級生でいい勝負ができれば」と振り返った。

 「しょうもない投球で申し訳ありません」と、お立ち台で不本意な投球を謝った唐川。残り39試合に向けて「できることは限られる。それをしっかりやりたい」と、謙虚な姿勢を貫いた。「野球ができるだけで幸せ」。ロッテの将来を背負う右腕にとって、忘れられない1勝となるに違いない。【斎藤庸裕】

 [2010年8月13日9時10分

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