<広島5-11阪神>◇5日◇マツダ

 虎をビビらせる豪快アーチじゃ!!

 広島は阪神に完敗し、シーズン勝ち越しが消えた。キラリと輝いたのがプロ4年目の会沢翼捕手(22)だ。7点を追う7回、3点をかえしてなおも2死三塁で、左中間にプロ初本塁打を放った。2点差に迫る今季1号2ランで意地を見せた。終盤に救援陣が崩れて敗れただけに将来の正捕手候補も「喜び半減です」と険しい表情ながら、記念すべき第1号で大きな1歩を踏み出した。

 左中間に伸びる白球を見ながら、会沢は心のなかで叫んだ。「抜けてくれ!」。打球はグングン伸びてスタンドイン…。7点を追う7回。3点をかえして、なおも2死二塁で打席へ。マウンドの久保田が暴投して二塁走者岩本が三塁に進んだ直後だ。高めの147キロ速球を豪快にたたき、バックスクリーン左に運んだ。

 会沢

 差し込まれた感覚がありました。1点でも多くかえしていればいいかなと思って。真っすぐ1本で行った感じです。準備だけはしっかりしておこうと。打ててよかったですね。

 敗色濃厚だった試合展開が、会沢のひと振りで2点差となり、阪神に迫る。記念すべきプロ初本塁打の今季1号2ランであきらめない姿勢をみせた。しかし、8回に1点を失い、9回に3失点。「悔しいです。しっかり反省して、次にそういうことをしないようにと考えています。(初本塁打は)うれしいのはうれしいですけど、チームが負けたので喜びは半減です」。リードする捕手としての責任感だけが全身を支配した。

 待望の1発だった。昨季1軍デビューを果たし、今年はパワーアップが最大のテーマだった。1月には栗原とともに米国アリゾナ州で自主トレを実施。2月の沖縄春季キャンプでは昨季よりも約40グラム重い、1キロのマスコットバットを用意した。「強く振れるようにするのが課題です」。スイングを重ねるたびに体は強くなる。本拠地での試合日は炎天下で早出特打を行うのが日課だ。強く振り切ることを継続。2軍では8本塁打を放ったが、今季1軍42打席目で本塁打を刻んだ。

 ファーストストライクから打って出る積極的な打撃スタイルが持ち味だ。内田打撃統括コーチも「思い切りのいい子だから。彼の特長だし、いまの段階はあれでいい。振って、だんだん覚えていくよ」と評した。エース前田健と同い年で06年高校生ドラフトで入団。「(本塁打の)ボールはないです。仕方ないです…」と話したが、これから本数を積み重ねていけばいい。前途有望なホープが強烈なインパクトを与えた。【酒井俊作】

 [2010年9月6日11時30分

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