<ソフトバンク1-2日本ハム>◇10日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンクは小久保裕紀内野手(38)の懸命プレーも勝利に結びつかなかった。08年以降犠打を記録していない主将が、4回の攻撃では送りバントを試みるなど勝利への執念をみせた。守備でも再三、体を張ったプレー。無念の延長戦黒星に「目の色変えて、体壊れてもいいくらいのつもりでいかんと」とチームを叱咤(しった)激励した。

 全身全霊を注いだ分、敗戦のショックも大きかった。試合後のベンチを最後に後にしたのは小久保だった。両肩にタオルをかけて引きあげるスラッガーの視線が下に落ちた。約30分後。球場を後にするとき、重い口を開いた。

 小久保

 何もないです。見ての通り。やめとこか、今日のオレのコメントは。何もない。目の色変えて、体壊れてもいいくらいのつもりでやらんと。

 最後のフレーズは、まるで心の叫びだった。

 勝利のためには何でもする。4回無死一塁での2打席目。バントを試みた。ファウルとなったが、08年以降犠打のない男にとって、この一戦にかける意気込みを示していた。カウント2-1からの低め変化球に食らいついた当たりは、三遊間を抜く泥臭いヒットとなり、一時は同点に追いつくシーンの架け橋となった。

 守っては6回に投ゴロの送球がベースから外れたが、ミットを伸ばしてベースにタッチしてアウトの判定をもぎ取った。9回にはフェンス際の打球をスライディングキャッチし、一邪飛とした。

 対武田勝に誰よりも闘志を燃やしていた。資料は「穴があくほど見た」。打席内でもスタンスの位置は、試合前に「前に立つのはやらん。(後ろに立って)原点に戻る」と話したように、武田勝対策として対戦2試合続けていた投手寄りを止めていた。打線は武田勝を6回で交代させたが、その後の4イニングが無安打。本拠で迎えたこの4試合打点を挙げたのは多村、小久保、松中の3人だけ。つながりを欠く打線の現状が何より辛かった。

 ベンチでは鬼気迫る表情で座り続けた。実は9日の9回にもベンチで咆(ほ)える主将がいた。敗戦濃厚の中、ナインを叱咤(しった)し、あきらめない姿勢の必要性と踏ん張りどころだと伝えたかった。

 首位西武と2・5ゲーム差。残り11戦で再び迎えた自力V消滅のピンチ。「よーし、また明日や」。愛車に乗り込んでから残した言葉は力強かった。【松井周治】

 [2010年9月11日10時33分

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