リーグ優勝を飾ったソフトバンクの多村仁志外野手(33)が今オフ、FA(フリーエージェント)権行使を視野に入れていることが28日、分かった。チーム残留が基本線ながら、球団は複数年契約に難色を示しており、金銭交渉を含めて決裂となれば、シーズンMVP候補の流出が避けられない。国内の複数球団が動向に注目するだけでなく、米大リーグ球団も視察済みで日米争奪戦に発展するケースもありそうだ。

 7年ぶりにリーグ優勝したホークスに難題が浮上した。多村サイドと球団は10月に本格的なFA残留交渉に入るが、決裂から流出の恐れがあることが分かった。多村サイドの希望は複数年契約とチーム3冠に輝いた活躍に見合う大幅年俸アップと見られる。ただ球団側は複数年に難色を示しており、年俸交渉以前に話し合いがこじれるケースに発展する可能性が出てきたのだ。

 FA権を保有する選手が活躍した場合、チーム残留のために複数年に発展するのが通常のパターンだ。海外FA権を取得した昨年は93試合出場に終わるなど不本意な成績だっただけに、大幅年俸ダウンと単年契約を受け入れた。だが、今季はシーズン自己最多の140試合に出場。打率3割2分4厘、27本塁打、89打点はいずれもチームトップ。シーズンMVPの有力候補は間違いない。リーグ優勝の立役者となり、胸を張って、交渉のテーブルにつくことができる。そのうえ多村には複数年にこだわる理由がある。

 ここまで単年契約が続き、家族と同居もできず、4年が経った。夫人と3人の愛娘を実家のある横浜に残して戦い続けている。ホークス残留が基本線だけに、複数年契約となれば、家族を福岡に呼んで“単身赴任”にピリオドを打つプランを胸の内に温めている。多村に近い関係者も「彼はホークスが好きだし、福岡の街もすごく気に入っている。できれば家族と一緒に住みたいと思っている」と語った。

 ただ球団幹部は「契約は1年契約が基本線。ケース・バイ・ケースはあるが、あくまで原則は単年契約」と話し、複数年契約に消極的。「多村選手はMVPクラスの評価をしている。野手では最も活躍していると言っていいくらい」と評価は高いだけに悩ましい。多村サイドは今季推定8000万円の年俸から大幅アップを狙っているが、契約年限を巡って交渉が難航すれば、年俸面までたどり着かない可能性もある。

 今季はダイヤモンドバックスやレンジャーズ、ジャイアンツなど大リーグ複数球団がホークス戦を視察。米メディアでもFA権保有選手として取り上げられたことがある。国内でも複数球団が多村の動向に注視するだけに、ホークス残留がかなわなければ、日米争奪戦へと発展しそうだ。

 [2010年9月29日10時44分

 紙面から]ソーシャルブックマーク