<日本シリーズ:ロッテ7-1中日>◇第3戦◇2日◇千葉マリン

 また清田が打った。1勝1敗で千葉マリンに舞台を移した第3戦で、ロッテの新人清田育宏外野手(24)が、同点弾を放った第1戦に続き大活躍だ。1-1で迎えた4回、中日山井から中堅越えに走者一掃の三塁打を放った。日本シリーズでの新人のV打点は、86年西武清原(対広島第7戦)以来。ここまで4打点で、岩下(東映)原(巨人)上川(中日)の持つ新人打点記録(6)の更新、近藤昭(大洋)高田(巨人)山口(阪急)に続く、史上4人目の新人MVPもみえてきた。

 どや!

 ワイも「キヨ」やでぇ~!

 清田がまたしても大仕事をやってのけた。1-1の4回、2死満塁。カウント0-2から山井の142キロ直球をはじき返した。力負けしなかった打球は伸び、中堅大島の頭を悠々と越えた。走者一掃の勝ち越し三塁打。「打った瞬間に抜けると思ってましたよ。1発で仕留められたのはよかった。もう最高ですよ。最高!」と興奮冷めやらぬ様子だった。

 持ってる男とはこの男のことか。シリーズ第1戦では長嶋らを抜くポストシーズン3本塁打の新人記録を打ち立て、この日は、86年の清原以来となる日本シリーズでのルーキーV打。まさにお祭り男だ。今年1月2日に行われたイベントでは、ファンから「キヨ」コールを受けた。期待に応えるように「清原さんみたいな活躍ができる選手になりたい」と堂々と誓った。生まれた年は1986年。清原が記録を打ち立てた年だった。それでも「ロッテのキヨ」襲名かと問われると、「なれないです。まだ早いです」と謙虚な姿勢は崩さなかった。

 8月からレギュラーに定着し、CSから一気に主役に躍り出た。「特に変わったことはしていない」と話すが、自然と変わっていた。この日、東洋大の先輩でロッテのOBでもある和田孝志氏が球場に訪れ「春に会った時に比べて体がひと回りでかくなった。分厚くなった」と話すほど、体つきは変わっていた。恒例の早出特打で毎日スイングし、下半身を軸にした打撃を繰り返した結果、筋肉は自然と増量していた。「あいつの練習量はすごい。筋トレはしてないけど、体重は増えたんじゃないですか」と関係者も証言。実感はなくても、飛距離は確実に上がっていた。

 思いきりのいいスイングも的確な判断力があってこそだ。シーズン最終戦が雨で中止となった際、シートをかぶったグラウンドを見詰めていると、「ヘッドスライディングをやるか」と言われたが、「ケガしたり、風邪をひいたらいけないので」と自粛。レギュラーの自覚十分だった。

 西村監督を「大したもんです」とうならせた男は、日本シリーズのMVPレースでも先頭に立った。60年の近藤昭仁(大洋)68年の高田繁(巨人)75年の山口高志(阪急)に続く、史上4人目の新人での獲得も夢ではない。「大勢のファンの前で西村監督を胴上げしたい」。あと2勝で05年以来の日本一。ロッテの「キヨ」のバットが、千葉に歓喜を呼び寄せるに違いない。【斎藤庸裕】

 [2010年11月3日9時0分

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