文部科学省は18日、セ・リーグの25日開幕を決めた日本野球機構(NPB)に対し、東京電力と東北電力の管内以外で試合を開催するよう求めた。東日本大震災の影響で厳しい電力需要事情が続く中、同管内での試合開催にNOを突きつけ、両管内でナイター開催を慎むよう求めた。前日17日、労組プロ野球選手会の反対を押し切って開幕を強行したNPBは、セ、パ両リーグともに、日程の大幅変更が不可避な情勢となった。セは19日に臨時理事会を開き、延期を含めて対応を協議する。

 文科省がNPBの決定に待ったをかけた。この日、鈴木寛副大臣名でNPBの加藤良三コミッショナー宛てに「東北地方太平洋沖地震に伴う協力のお願い」と題した文書を郵送した。同時に電子メールと電話でも内容を伝えた。

 その文書には「電力の安定供給が確保できるまで」との条件つきで(1)東京、東北電力管内以外で試合を開催するよう可能な限りの努力(2)特に、両管内では夜間に試合をすることは厳に慎む、との要請が記されていた。NPBは前日17日、選手会の反対を押し切って、25日のセ・リーグ開幕とパ・リーグの開幕を4月12日に延期すると発表したばかり。一夜明けて、文科省は「NO」の反応を示した。

 文科省はこの日午前、NPBに対し「セ・リーグが25日の開幕を決定した」との報道内容について、電話で事実確認を行った。高木大臣は記者会見で「計画停電で国民生活が苦労している一方、(ナイターで)明々とライトを使用するのに違和感があるのは当然だ」と、ナイター開催が国民の理解を得るのは難しいとの考えを示した。同時に「国民を励ますとかチャリティーの意味合いもあり、当事者(NPB)の判断に委ねられる」とも話したが、NPB側から開催地変更などの自主的判断が示されなかった。省内で社会情勢などの検討を行い、異例の要請に踏み切ったという。

 文科省は、特例民法法人であるNPBの所管官庁にあたる。NPBは通常、事業計画、報告書の提出、定款変更の報告などを行っている。所管官庁は法人に対し、命令または指導、協力依頼(要請)などを行うことができる。要請は法律に基づく「命令」とは違って強制力こそないが、NPB側の受け入れは必至な情勢。同省の競技スポーツ課・森脇渉専門官は、今回のような要請は「前例はないと思います」と話した。

 交流戦までに、セ・リーグでは開幕戦を含む60試合が、パは40試合が、東京ドームや神宮球場など東北電力、東京電力管内で予定されている。既にパでは3月25日から4月12日に開幕日を変更し、Kスタ宮城での試合はほっともっとフィールド神戸での代替開催が有力視された。しかし、西武ドーム(埼玉)やQVCマリン(千葉)などは両電力管内に入るため、パを含めて日程の全面的な組み直しが不可避の情勢となった。

 NPBは各球団から意見を求めるとしているが、迅速かつ強力なリーダーシップが求められる事態となった。