スパルタ内閣だ-。阪神は12日、来季から黒田正宏ヘッドコーチ(64)水谷実雄1軍打撃コーチ(64)平田勝男2軍監督(53)河村健一郎2軍打撃コーチ(64)が就任すると正式発表した。イチローの恩師である河村コーチは選手寮に泊まり込んで“24時間態勢”で指導にあたる。5位という屈辱からの巻き返しへ、厳しさを打ち出した和田新内閣が発足する。

 住み込み指導で若虎をイチ流に-。新たに2軍打撃コーチに就任した河村氏は会見で「1歩1歩ですが、スピードアップしていく。甲子園で暴れる選手を近いうちに3、4人作りたい」と意気込んだ。

 チームの課題である若手強化を果たすためにも、うってつけの人材だ。オリックスコーチ時代にはイチロー(米大ヤンキース)と巡り合い、独特の「振り子打法」を生んで、大選手への道筋を作った。「彼と初めて会ったときも、潜在能力の引き出しから始まっている。長所を伸ばす。長所とは打てるところ。打てるところを広げていけば、弱点も減っていく」と指導モットーを披露。若虎を大きく育てるスタンスを示した。

 中村GMも「世界のイチロー選手の師匠の1人。虎風荘に泊まり込んでもらって、日夜、若手選手の育成に力を注いでもらう」と説明した。東京在住の同氏は虎風荘で若手と寝食をともにし、夜間練習も積極的に行う予定。楽しみな選手を問われ「伊藤(隼)君や森田君、中谷君。しっかりそばで見てみたい」と言う。

 「力強く、アグレッシブに。闘争心がスポーツの世界、一番大事です。打つというのは攻撃。そういうのを一番持っていたのがイチロー。僕の集大成として、いろんなことをみんなと話ながらやっていきたい」

 イチローの育成秘話など阪神の若手への「教材」は事欠かない。まずは17日に宮崎入りし、フェニックス・リーグを戦う2軍本隊に合流。プロ29年目の名コーチが“イチローイズム”を注入する。【酒井俊作】

 ◆河村健一郎(かわむら・けんいちろう)1948年(昭23)2月26日、山口県生まれ。桜ケ丘、芝浦工大、日本石油から71年ドラフト外で阪急(現オリックス)に入団。主に捕手として実働11年間で632試合に出場し、打率2割6分7厘、49本塁打。82年の現役引退後は阪急、オリックス、巨人、中日の打撃コーチを歴任。04年にオリックスに復帰し、同年で退団。その後は野球評論家として活躍した。