阪神藤川球児投手(32)が8日、今年4月に取得していた海外フリーエージェント(FA)権の行使を表明した。この日の昼、阪神球団に権利行使の意思を伝え、球団もNPBに申請書類を提出した。10月末から渡米中だが、球団広報を通じて「長年の目標に挑戦したい気持ちは強く、考えが変わる事はありませんでした」とコメント。憧れの舞台に向けて覚悟を固めた。

 あくまで意思を貫く。野球人生の岐路に立った藤川が決断を下した。海外FA権を行使し、メジャーに挑戦する。この日の昼、滞在先の米国から国際電話をかけ、南球団社長、高野球団本部長に米球界を目指す意思を伝えた。

 球団広報を通じて14年間在籍した阪神のファン、野球を愛する人たちにメッセージを寄せた。

 藤川

 2007年のオフに初めてお話しさせていただいた、メジャーリーグへの思いはずっと抱き続けておりました。今年に入ってからはすべての可能性を考え、熟慮した末、やはり、長年の目標に挑戦したい気持ちは強く、考えが変わることはありませんでした。

 07年オフにメジャーへの思いを初めて公言。毎年のようにポスティングシステムでのメジャー移籍を訴えたが、認められなかった。今年4月に海外FA権を取得しても、球団から残留を要請された。今季5位に終わり、投手キャプテンとして10月11日には「責任を感じている」と話し、悩める胸中も明かした。それでも、トップアスリートとして、高みを目指す野望、意思は揺るがなかった。

 阪神にとっては大きな戦力ダウンだ。南球団社長は「こちらも覚悟はしていましたが、今は残念ということしか申し上げられません。功績は大きいですし、彼の穴は埋まりません」と落胆したが、今月14日にFA宣言選手として公示され、メジャーとの交渉が始まる。藤川は10月29日に渡米しており、本格的に入団先を探すことになった。

 シーズン中、深夜に起きてメジャー中継を見たこともあった。テレビに映るレンジャーズ・ダルビッシュの勇姿…。憧れは募る一方だった。「これからメジャーリーグの球団と契約できるよう進めていきたいと思います。何とぞ、ご理解いただき、今後とも温かいご声援をいただければ幸いです」。移籍先が正式に決まれば、会見を開いて自らの思いを伝える。

 温め続けてきた大志に向かい、第1歩を踏み出した。【酒井俊作】