<楽天0-6西武>◇13日◇Kスタ宮城

 4年目の西武菊池雄星投手(21)がプロ初完封を飾った。3安打無四球で楽天打線に三塁を踏ませず、リーグ最多に並ぶ2勝目。防御率は0・44となり、楽天田中らを抜いて堂々のリーグトップに躍り出た。こだわりの球速は、プロ最速を1キロ更新する153キロをマーク。首位を走るチームを頼もしく引っ張る。故郷岩手から駆けつけた家族、友人が見守るなか、みちのくが期待する左腕が東北で初勝利を挙げた。

 球速で観客を魅了し、マウンドは誰にも譲らない。かつて甲子園をわかせた“花巻東の155キロ左腕”がプロで一皮むけ、思い出のみちのくで光り輝いた。128球で初完封の菊池は「すごい疲れました。いつも完封を意識してますけど、プロに入って長いイニングを投げてなかった。高校の時は毎日やってたんだなと懐かしかったです」。疲労感が心地よかった。

 球威、制球ともに申し分なかった。5回1死までパーフェクト投球。初安打を許した牧田には、プロ最速タイの152キロ内角直球でバットをへし折った。「かわせるほど器用じゃない。いけるところまで真っすぐでいこう」と直球で押し、終盤になってもファウルで押し込む。9回に西田を二直に打ち取ったボールは、球場のスピード表示でプロ最速153キロを計測した。

 スピードボールへのこだわりは強い。あこがれの存在は、メジャー最速169キロ左腕のキューバ出身のチャプマン(レッズ)。携帯電話のメールアドレスには「チャプマン」の文字を入れ、目標にしている。プロ3年目の昨年までは150キロ止まり。投球フォームが安定し、今年はキャンプから好調でこの日は6球が150キロを超えた。

 他球団から見た菊池は「直球とスライダーの投手」のイメージ。今年は操ることができる球種が2つ増えて、幻惑させている。カーブはハワイ自主トレで岸に教わり、精度が上がった。試していたチェンジアップは、オープン戦の終盤から制球力が格段に向上した。渡辺監督は「変化球でカウントをつくるバリエーションが増えた。楽天もビックリしたんじゃないかな。見ていてすばらしい投球だった」と絶賛した。

 8回を投げ終え、監督から「球数もいってるし、代わるか」と言われ、「いきます」と即答した。11年8月18日の楽天戦では、9回1死から山崎武(現中日)にソロ被弾し、完封を逃した。同じ過ちは繰り返さず、最終回も淡々と3つのアウトを加えた。プロ初完封、そしてプロ最速更新。4年目の進化をたくましく印象づけた節目のプロ通算10勝目だった。