<ソフトバンク6-1ロッテ>◇6日◇ヤフオクドーム

 倍返しの復活星!

 ソフトバンク寺原隼人投手(29)が古巣復帰後初の完投勝利を飾った。5月29日巨人戦以来、約2カ月ぶりの4勝目。人気ドラマ「半沢直樹」の主演俳優、堺雅人は同じ少年野球チーム出身。話題の先輩に続けとばかりに、今季最多133球で投げきった。大事な6連戦の初戦でチームを勢いづかせ、2位ロッテ、西武と再びゲーム差なしに接近した。

 久しぶりの味だった。寺原は4勝目の瞬間、グラブをポンとたたいた。133球の熱投。続投を直訴し、最後まで投げきったのは先発の責任感だった。

 「最初から9回を投げると思ってマウンドに上がっている。中継ぎには相当な迷惑をかけている。しかも連戦のアタマだし、1人で投げたかった」

 FA移籍した今季は完投負けこそあるが、完投勝利は初めて。チームでは摂津に続く2人目の達成者となった。6連戦初戦に中継ぎを休ませたのは大きい。勝てず、考えた末に出た結論は、頭をシンプルにすることだった。

 「しっかりボールを投げること。カーブは高さだけ間違わずに。真っすぐは細川さんのミットをめがけて腕を振る。それだけ」

 1回先頭の荻野貴に四球を与えて今江の先制打につながったが、すぐに修正。2回からセットポジションにして、テンポもバランスも良くなった。後半戦の初勝利を「長かった」としみじみ振り返った。

 寺原は宮崎・本郷小3年の時に軟式「ワールドボーイ」で野球を始めた。10歳上のOBに俳優堺雅人がいる。同郷の2人は、ともに「みやざき大使」を委嘱されている。寺原は「半沢直樹」の初回放送を逃し、見るタイミングを失った。それでも「宮崎の先輩だし見たいんですよ」。6月以降は白星なく、ロッテには3週間前、5回10安打6失点。ドラマの主人公のように、やられたらやり返す、10倍返しのつもりだった。

 期待する右腕の快投で、2位集団にピタリ。秋山監督は「2回からいろいろ考えて投げていた。能力があるし、できる投手」と絶賛した。試合後には本人に「次が大事だ」と伝えた。寺原がワイルドに伸ばしたあごひげには、白いものが目立った。「増えましたよ。ストレスかも」と笑った。白星が最高の良薬になるはずだ。【大池和幸】