<広島2-1阪神>◇13日◇どらドラパーク米子

 故郷に錦を飾った!

 広島ドラフト2位の九里亜蓮投手(22)が中学時代を過ごした米子で、7回4安打1失点と好投した。味方の援護に恵まれない中、112球を投げて最少失点で切り抜けた。自身2連敗中で背水のマウンドだったが、首脳陣の信頼を取り戻す投球となった。試合は延長12回、梵英心内野手(33)のサヨナラ弾で劇的勝利を収めた。

 あのころとは違う。九里が汗を吹き飛ばして、歯を食いしばって右腕を振った。序盤から緩急巧みに低めをつき、打たせて取った。3回2死二塁からボークで走者を進められ、2番大和に先制の中前適時打を献上。それでもズルズル崩れず、7回112球を投げて4安打1失点。大人の投球で成長を証明した。

 「立ち上がりはボールが高めに浮いている自覚があった。途中、ショートバウンドを投げるぐらいの気持ちで低めを意識した。次の1点はやらないという気持ちで、4回以降はうまく打ち取れたと思います」

 米子は父との米国生活を終えた後、祖母淳子さんと中学時代を過ごした場所だ。中学2年時は夜通し遊び、何度も野球の練習をサボッた。そんな時、淳子さんは叱りつけてくれた。「ばあちゃんがいなかったら野球を続けていないと思う」。この日は祖母や母早登江さん、妹聖莉奈さんら親戚も含めた約10人が球場に集結。中学時代の古巣、ボーイズリーグ・米子ビクターズの後輩の姿もあった。自身2連敗で迎えた背水の先発マウンド。発奮材料には事欠かなかった。

 米子入りした前日12日、ドラフト1位大瀬良を連れて、祖母の自宅を訪れた。家族の「大地くんは来ないの?」というオファーに応えた形だ。母、妹と計5人で食卓を囲み、久々に祖母手作りの特製肉丼に舌鼓を打った。淳子さんは「電話をくれてから家に到着するまで10分とたたなかった。慌てて作りました。昔よく食べさせていたモノです」と照れ笑い。愛のパワーを蓄え「明日は絶対勝つから」と家族に誓っていた。

 米子球場には思い出がある。中学時代、ある大会の決勝で完投負けした一方で、阪神-広島戦でボールボーイを務め「(阪神)ウィリアムスとすれ違って興奮しました」。2軍の楽天-巨人戦では楽天に在籍していた山崎武司の荷物を運び、バッティンググローブをプレゼントされたこともある。勝ち星はつかなかったが、恩返しには最高の舞台で、家族に好投をささげた。【佐井陽介】