<フレッシュオールスター:全イ7-6全ウ>◇17日◇長崎

 下克上の始まりだ。阪神ドラフト5位山本翔也投手(25)が左キラーぶりを発揮した。7回に7番手で登板し、1回を1安打無失点で2奪三振。14日に1軍初昇格を果たしたものの、登板機会はなし。まずはフレッシュ球宴でインパクトを残した。

 1死一塁で3番の西武森を迎え、「今年の顔」を鮮やかに斬った。カウント1-2からの5球目。外角低めに106キロの遅いスライダーを投じると、森の膝は折れ曲がった。「前に崩すこともできたし、そういうのも使えるなと思いました」。7歳年下の甲子園優勝経験を持つスラッガーを、軽~くひねった。同じ左の西武永江からも空振り三振。本塁打を放っていた4番の西武山川を右飛に打ち取ると、はじける笑顔でベンチに向かった。

 高校時代は甲子園での登板機会なし。法大時代もリーグ戦は4年時の3試合登板にとどまった。中学時代から長距離走は後ろの方で球も特別速くなかった。「まさか山本が…」。プロ入りが決まると、旧友は驚いた。中学時代にバッテリーを組んだ捕手は「コントロールだけは本当に良かった。逆にそれ以外に思いつかないくらい…」と言った。生命線の正確なコントロール。106キロでの森斬りは大きな自信につながった。

 「観客が入っているところで投げるのは楽しい。1軍で中継ぎとして自分のポジションを確立させたい」

 自信を手みやげに、今日から早速1軍の練習に再合流。巨人阿部、アンダーソンら左の強打者に立ち向かう。

 ◆山本翔也(やまもと・しょうや)1988年(昭63)10月12日、福井・武生市(現越前市)生まれ。福井(現福井工大福井)で1年夏に甲子園に出場したが登板機会なし。法大を卒業後は王子製紙(現王子)で3度、都市対抗に出場。座右の銘は「人間万事塞翁(さいおう)が馬」。182センチ、90キロ。左投げ左打ち。