<SMBC日本シリーズ2014:ソフトバンク5-1阪神>◇第3戦◇28日◇ヤフオクドーム

 阪神大和外野手(26)が突っ込んだ。低く伸びてくるライナーに向かっていった。4回、2点目を奪われて、なおも2死二、三塁。藤浪のカットボールが内川にはじき返された。だれもが致命的な失点を覚悟した。だが、虎が誇る守備の名手は体を前に投げ出すと、地面ぎりぎりで白球をつかんだ。

 「無理だと思ったんですが、後ろにいっても(前に落ちても)2点入るなら一緒だと思って」

 沸き上がる虎党と三塁側ベンチ。そして誰よりも、藤浪が両手をたたいて万歳していた。1回に先制されて以降、押されまくっていた展開を、一時は寸断するビッグプレーだった。

 外野手にコンバートされて3年目、昨季もゴールデングラブ賞級の守備を見せていたが、今季はさらに磨かれた。

 「前への意識はありますね。孝介さんがすぐ後ろにきてくれているんで。思い切ってと思っています」

 ゴールデングラブ賞4度の福留と右中間コンビを組む。その福留が大和の守備力をこう証言する。

 「大和とは目と目で会話できる。そういう関係になる外野手はあまりいない」

 同郷鹿児島の先輩からは、送球も捕球も常に「勝負しろ」と言われている。後ろには心強いカバーがいる。大和のスーパープレーの裏には外野手同士のそんな信頼関係がある。

 打撃では大隣の前に2三振を喫するなど、無安打に終わった。だが、大和はチームに貢献できる“武器”を持っている。初回から最後まで沸きに沸いた敵地を、一瞬、静かにさせた。【鈴木忠平】