ソフトバンクにドラフト1位指名された明豊・今宮健太内野手(3年)が「永遠のライバル」との対決を心待ちにした。西武が獲得交渉権を得た花巻東・菊池とは今年の春夏2度甲子園で対戦。高校通算62本塁打のスラッガーも、怪物左腕の前には6打数1安打と抑え込まれた。子供の時からあこがれ続けた鷹のユニホームに身をつつみ、プロでのリベンジを宣言。走攻守三拍子を売りにする171センチ、70キロの「小さな巨人」は「3000本安打」というビッグな目標も掲げた。

 「鳥肌が立った」。自分の名前が呼ばれた瞬間、今宮は硬い表情のまま2度首を小さく縦に振った。プロの世界で生きていく覚悟を決めた瞬間だった。「こんな小さい体の自分を1位で指名してくれた。地元九州で活躍したい。『小さな巨人』となって、ソフトバンクに恩返ししたい」。171センチ、70キロの少年は、全身からあふれ出す喜びを抑えきれなかった。

 ドラフト中継を見ながら「1文字目が『イ』か『キ』かだけを聞いていた」。ソフトバンクの1位指名が「今宮」なのか「菊池」なのか。それを考えると前夜は眠れなかった。小学生のとき、週末は別府市内から父美智雄さん(54)の運転する車で福岡市内へよく連れて行ってもらった。雁の巣球場での2軍練習を見学し、バッティングセンターへ。夜は福岡ヤフードームでナイターを見た。「いつかは僕も」。あこがれ続けたチームに自分の名前が呼ばれた。「今までに経験したことのないゾクっと感があった」。

 あこがれのユニホームに身をつつみ、怪物左腕へのリベンジを果たす。菊池とは今年の春と夏、甲子園で2度対戦。前夜眠れなかった恨み?

 もあったのか「春でも、夏でも、ドラフトでも。(菊池の名前が自分に)まとわりついてきた。野球選手としての運命を感じる」とおどけてみせた。

 今春のセンバツ。2回戦で菊池と対戦した今宮は「100%内角に来るとわかっていても、菊池君の球は打てなかった」と話した。その悔しさを胸に、センバツ後から夏までの間に、30発という驚異的ペースでアーチを量産。夏のリベンジの舞台を自らの手でつかんだ。しかし夏の甲子園準々決勝での対戦。菊池が背中の痛みを訴え5回途中で緊急降板、結局2打数無安打に終わった。「同一リーグだし、早く勝負ができるように死に物狂いでやりたい」と意気込んだ。

 秋山監督は「身体能力が高いし、遠くに飛ばせる能力もある。松井稼頭央(アストロズ)のような選手になってくれたら」と期待を込めた。今宮自身も最もあこがれる野球選手が松井だ。「松井さんみたいな選手になって3割、30盗塁を決めたい」。それだけでは終わらない。「3000本安打も目指したい」。小さな巨人の夢は、どこまでも大きい。