侍ジャパンのカブス鈴木誠也外野手(28)がWBCへの出場を辞退することが2月28日、日本野球機構(NPB)より発表された。

米国時間25日(日本時間26日)、米アリゾナ州メサでのカ軍キャンプ中に左脇腹の張りを訴え、出場予定だったオープン戦を欠場。MRI検査の結果、WBC出場を断念した。攻守の軸となる鈴木の欠場で、栗山英樹監督(61)は戦力構想の練り直しが迫られる。代替選手は阪神近本光司外野手(28)が有力だが、広島西川龍馬外野手(28)、ソフトバンク牧原大成内野手(30)も候補に挙がる。

   ◇   ◇   ◇

願いは通じなかった。前日に宮崎強化合宿を終えた栗山監督は「本当に心配している。誠也にとって大きな事になってなければいい」と話していた。この日は3日から壮行試合を行う名古屋へ、空路移動。もともと取材対応の予定はなかった。1日の練習日に自らの言葉で語るべく、コメントを発表することも控えた。

3大会ぶりの世界一へ、栗山監督は構想の練り直しが迫られる。鈴木を攻守の軸に考えていた。昨年12月、鈴木がWBC参加を表明した際「全てができる。走塁から守備からスローイングからトップレベル。特に日本は左打者が多い。右バッターがどうしても必要だった」と語った。準決勝は米国と当たる可能性が高い。敵を知るメジャーリーガーの存在は大きかった。大谷、村上、吉田ら主砲に左打ちが多いことからも、右打ちの鈴木は貴重だった。

NPBは代替選手を「未定」としているが、阪神近本が有力だ。走攻守そろい、昨年11月の強化試合にも出場。栗山監督の下でプレー済みなのは大きい。広島西川、ソフトバンク牧原大も候補に挙がる。西川も11月の強化試合に出ており、代打の期待もかかる。牧原大は走力に加え、手薄感が残る遊撃のバックアップも可能だ。

鈴木の穴は簡単には埋まらないが、守備はやりくりできそうだ。外野は左翼吉田、中堅ヌートバー、右翼鈴木のメジャー3人が第一プランだった。ヌートバーを右翼に回し、中堅は近藤が有力。中堅を守るのは昨季からだが、強化合宿でも無難にこなした。代替候補3人の誰が加わっても、試合終盤に吉田を下げて守備を固められる。それにより、周東を代走の切り札に専念させられる。

問題は、やはり打線だ。鈴木はクリーンアップを担う可能性が高かった。近藤も勝負強さは指折りだが、鈴木の長打力は埋められない。近藤が先発することで、代打の強力なカードも抜ける。また近本、西川、牧原大とも左打ち。その点でも右打ち外野手の鈴木の存在感は大きかった。ただ、あらゆる事態を想定するのは代表の宿命。大会前に襲ってきた試練も乗り越えるだけだ。【古川真弥】