プロレス界の輝く女性を紹介するコーナー第7回は、東京女子プロレスのエース山下実優(24)。充実の1年で培った経験を生かし、1月4日後楽園大会でプリンセス・オブ・プリンセス王座返り咲きを狙う。【取材・構成=高場泉穂】

1月4日にタイトル戦を控える東京女子プロレスの山下実優
1月4日にタイトル戦を控える東京女子プロレスの山下実優


輝く場所はステージではなく、リングと決まっていたのかもしれない。東京女子プロレスのエース山下の夢は、アイドルになることだった。モーニング娘。の後藤真希や矢口真里に憧れ、中学卒業後はアルバイトをしながら、アイドルや芸能事務所のオーディションに挑戦。約2年受け続けたが、ことごとく失敗した。そんな時に知人に紹介されたのがDDT高木三四郎社長。プロレスに誘われ、「楽しそうかも」と軽い気持ちで福岡から上京した。

「あわよくば、でしたね」。上京当初はまだアイドル志望の気持ちが残っていたが、プロレスを続けていくうち、夢はいつのまにか団体の発展へと変わった。13年の旗揚げ時から関わるだけに「悔しい思いをいっぱいしました」。客は入らず、プロレス専門誌にさえ取材してもらえなかった。だが鎖国体制を貫き、個性的な選手をそろえる東女ブランドは徐々に浸透。19年は選手が米国、メキシコのリングに上がるなど海外にも広がりをみせた。「空手の時はずっと数字上の1位を目指していたけど、オンリーワンのほうが難しい。自分たちは自信があるし、海外からも注目されてきている」と成長に胸を張る。

19年は山下個人にとって変化の年だった。大きな出来事は、11月DDT両国大会での男女混合タッグ。創作話を語る珍奇な技で知られるアントーニオ本多とタッグを組み、里歩、AEWのケニー・オメガ組と対戦。プロレスの幅が広がった。「今まではキックなど想像しやすい技での強さしか表現できなかったけど、アントンさんと組んで、お客さんを楽しませる強さを知った。これもできるんだと気付けた」。11月のDDT後楽園大会では再びアントンと組み、試合内でさだまさし「関白宣言」の替え歌を美声で披露。観客の心をぐっとつかんだ。

 
 

1月4日の後楽園大会ではひと皮向けた姿でプリプリ王者坂崎ユカに挑む。今年、米団体AEWデビューした坂崎が相手とあり、世界へのアピールにもなる一戦。手の内を知る同期だけに「お互い尽きて、限界を超えて何かが見えるのでは」と激闘を覚悟する。

9月にはモーニング娘。のライブを見るため、わざわざ富山まで足を運んだ。「彼女らは信念のかたまり。自分、まだまだだなと思いました」。大好きなアイドルたちに負けぬ熱さで、返り咲きを狙う。

◆山下実優(やました・みゆ)1995年(平7)3月17日、福岡県生まれ。小学生から空手を始め、17歳で上京し、東京女子プロレスに入門。13年8月にデビュー。16年1月4日に中島翔子を下し、プリンセス・オブ・プリンセス王座初代王者となる。得意技はクラッシュ・ラビットヒート、アティテュード・アジャストメント。165センチ。