「いやあ、うれしかったですね。ボクがIWGPヘビー級王者のタイトルを取った年に広島が優勝するなんて。運命を感じますね」。新日本プロレスのIWGPインターコンチネンタル王者内藤哲也(34)は、プロ野球広島カープの優勝に、感激もひとしおだった。自他ともに認めるプロレス界きっての広島ファン。プロレス試合の合間を縫って、時間ができれば広島を応援。黒田の200勝がかかった試合には、わざわざ金沢まで足を運んだ。

 広島ファンになったのは、1995年のことだった。それまで応援していたのは原辰徳のいる巨人だった。原が引退すると一時は応援の対象を失なったものの、広島の足を使う野球に魅了された。「カープにはビッグネームもそんなにいないけど、若い選手が大きなチームに立ち向かっていく姿が好きなんです」と内藤は言う。

 小、中学校と、野球、サッカーに明け暮れた少年時代。高校まで、所属した部活ではすべてキャプテンを務め、主力として活躍した。しかし、都立高校のサッカー部は、都大会にも出場できない弱小校。団体競技に限界を感じ、プロレスラーを志すようになった。

 05年に入団した新日本では、野球部の2番、ショートとして活躍している。広島の応援グッズも集め、オフには仲間とマツダスタジアムに出かけることも。ロスインゴベルナブレス・デ・ハポンがブレークする前は、内藤のコスチュームは広島カラーの赤が基調だった。現在も、黒ずくめの衣装に、赤のリストバンドで広島愛をさりげなくアピール。今年は「神ってる」という言葉も、試合後のインタビューでひんぱんに使っている。

 20年近く応援してきた広島が、9月に念願のリーグ優勝を決めた。内藤にとっては、デビュー10年目にレスラーとしての花を咲かせた記念すべき年でダブルのおめでたとなった。4月に悲願のIWGPヘビー級王座を獲得。広島優勝後の9月25日には、神戸大会でIWGPインターコンチネンタル王座を、エルガンから奪取してみせた。「プロレス界を見渡して誰が話題の中心か分かるでしょう。毎日、カープの結果を見てその活躍に引っ張られた。カープのおかげでモチベーションを保てた」と内藤。そして野望を打ち明けた。「マツダスタジアムで始球式をやってみたい。プロレス界で1番ふさわしいのはオレでしょ」。内藤はクライマックスシリーズのファイナルに予約しているという。【桝田朗】