WBC世界フライ級王者比嘉大吾(22=白井・具志堅)は強面(こわもて)だ。沖縄出身らしい濃いめの顔に、ゴワッと蓄えたあごひげ。WBC世界ライトフライ級王者拳四朗(25=BMB)は優男だ。京都出身らしいはんなり顔で、お肌つるつる。見た目対極にある2人の世界王者が22日のトリプル世界戦でそろって初防衛に成功した翌日、都内で並んで会見した。実は内面も対極というのが、意外で興味深かった。

 比嘉は試合前日の計量後から、体調がエライことになっていたらしい。

 「ご飯を食べに行って、先に白ご飯とみそ汁を出してもらって食べたんですが…」。試合当日。トイレに行くと…固形物は出ず、ほぼ液体ばかり。会場入りし、アップを始めても汗が全然出ない。「俺、どうなるんやろう」とすごく不安だったそうだ。会見では師匠の具志堅用高会長に「ご飯にみそ汁なんて、全然ダメ!」と冗談交じりにしかられていた。

 対して拳四朗は計量後、5万4000円の超豪華特製焼き肉弁当を“同名”の焼き肉店「けんしろう」のオーナーに差し入れてもらい、ガツガツ食べた。記者が52年生きてきて、1度も食べたことがないシャトーブリアンをほおばり「これ、ヤバッ! めっちゃ柔らかい」と大はしゃぎした。「だんだん緊張しなくなってきてるんです。初めての世界戦から前日、しっかり眠れるようになってるし」。試合当日はトイレも絶好調だった。

 ほんで、試合の結果はというと。比嘉は、過去21戦でダウン経験ゼロの同級5位トマ・マソンを暴風のような攻めに巻き込み、7回1分10秒TKOで仕留めた。デビューから14戦14KO勝ちで、パーフェクトレコードを伸ばした。もうバケモノや。拳四朗は同級1位ペドロ・ゲバラに判定勝ち。ジャッジ3者全員のポイントでリードを許した4回までの劣勢を逆転したのだから、それはそれでなかなかの根性やと思う。

 立ち話で、お互いの印象を聞いてみた。比嘉の拳四朗評。「拳四朗さんって、自分ができないリラックスを当たり前にできる。すごい。試合前日に映画見たり、買い物行ったりするんでしょ?」。拳四朗の比嘉評。「全部KOなんて本当にすごい。尊敬します」。

 強面やのに妙に繊細でコンディションを崩してもKOしてしまう海人。試合後のテレビカメラに顔を近づけて、投げキッスまでしてしまう癒やし系の京男。階級は1つ違い。いつか、ベルトかけて戦ってくれんかなあ。【加藤裕一】