井上尚弥のスパーリング相手として来日したジャフェスリー・ラミド
井上尚弥のスパーリング相手として来日したジャフェスリー・ラミド

ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)決勝(11月7日、さいたまスーパーアリーナ)を控えるWBA・IBF世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)は今週から第2次スパーリングに突入した。米老舗ボクシング誌「ザ・リング」が選定するパウンド・フォー・パウンド(階級を超越した最強王者)ランキング1位の3団体統一ライト級王者ワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)の練習パートナーを務めるジャフェスリー・ラミド(19=米国)と約1カ月間、拳を交える。5階級制覇王者のWBAスーパー王者ノニト・ドネア(36=フィリピン)との決勝に備え「強力助っ人」を呼び寄せた。

所属ジムの大橋秀行会長(54)によれば、ラミドは20年東京オリンピック(五輪)米国フェザー級代表候補で、全米アマチュア同級ランキング2位に名を連ねる。10月に同級ランキング1位との代表選考会が予定されており、その強化の意味も込めてラミド陣営からスパーリングの申し込みがあったという。米カリフォルニア州オレンジ郡を拠点とするフィリピン系米国人のラミドは、どちらかと言えば優しい顔立ち。大橋会長は「以前の私の経験から言えば、あの雰囲気の顔で弱かったボクサーは誰もいない」と、静かに燃えるラミドのオーラを感じ取っている。

昨年から2度、ラミドはロマチェンコの練習パートナーを担当している。ボクシングは1回3分間だが、ロマ流スパーは1回4分間。その過酷な設定であっても、1日に9回を任されていたという。計150回以上のラウンド数を消化してきたが、ロマチェンコに倒されることがなかったそうだ。ラミドの関係者は「ロマチェンコは3人のパートナーを呼ぶが、ラミド以外の2人は、3ラウンドももたなかった」と明かした。

9月上旬に来日済みで、大橋ジムで時差調整を兼ねてトレーニングを積んでいる。他選手とのスパーリングをチェックした井上は「うまいですよ。アマチュアの選手なので。うまさはすごくあります」と実力を認める。対ドネア対策という意味では「スタイルが似ているかと言えば、そうではないですけれど」と前置きした上で「自分の引き出しの多さを試すには良いパートナーです」と楽しみにしている様子だった。

8月下旬、井上は「刺激が欲しい」という内容をSNSにつづった。WBSS決勝発表会見では、他ジムへの出げいこにも興味を示すほど触発されるものを求めていた。最強王者の練習パートナーは、モンスターにとって「刺激」になるのか。報道陣には、ラミドとのスパーリングが公開されることはないが、井上の言動を追って確認していきたい。その刺激度の高さが、WBSS決勝に向けた仕上がりにも影響することは間違いないからだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

スパーリングを行う井上尚弥
スパーリングを行う井上尚弥